デモンパラサイト・リプレイ 極道☆キラリ1

デモンパラサイト・リプレイ 極道☆キラリ1

著者・藤澤さなえ先生&グループSNE。挿絵・巻田佳春先生。監修・北沢慶先生。
・登場人物
PCメンバーは今の所4人。セラフィムエージェントで15歳の、共生生物:グラディウスの前衛型悪魔憑き、春日輝。ヤクザの娘でお嬢様学院である聖ジブリール学園に通う17歳、ドSな我侭お嬢様キャラで共生生物:ドラグーンで戦闘時にはドラゴンに変身して戦う前衛型悪魔憑きにして戦闘後のお色気担当、桜川蕾花。蕾花の護衛で同じく聖ジブリール学園に通うバウンサー、共生生物:ヴァンブレイスの後衛&回復担当の悪魔憑き相田律。某有名女優に飼われているという設定のトカゲの悪魔憑きで、共生生物:ショーテルを活かしての後衛からの攻撃と相手の回避値を下げるなどの幻惑担当、変身して人間態を取ると長身の紳士となる菊千代。
NPCとしては聖ジブリール学園の学生で蕾花や律のクラスメートの黒鳥麗奈、澄田さん、教師の唐沢、蕾花の持つベンツの運転手のヤス。などなどです。
・シナリオ
原付バイクで新しい任務地を目指していたセラフィムの少年エージェント春日輝。ところがスモークガラスの黒いベンツ(バリバリの極道仕様)に絡まれていきなり大ピンチ。そしてそのベンツから降りてきたのは日本刀を持ったきつめの美少女。「あんた、もっと端っこ走りなさいよ。邪魔よ!」「そんなむちゃくちゃな。でもすみません…」極道娘・桜川らいかと色々可哀想な少年・春日輝。それが二人の“悪魔憑き”運命の出会いであった—。気弱な美少年エージェントが超ドSお嬢様のセクハラに耐えつつ悪を斬る!?アクション!美少女!そして女装!新たな地平を切り開くアルティメット・パラサイト・リプレイ開幕。(7&YHPより抜粋。)
・感想
第一印象は、「これはまた、景気よく脱いで食うデモンパラサイトらしい作品が出てきたな…!」というものでした。デモンパラサイトの売りのひとつである「食う」「脱ぐ」という点において、この作品はそれを前面に出しながらも、しかしエロスとは無関係となっていました。あれだけ景気よく脱いだり食ったりして無関係でいられるのは別な意味で凄いです。
物語は、これまでのリプレイでよく舞台となっていた大友市ではなく鞠谷市という、新しい場所が舞台となります。セラフィム支部も無く、しかし悪魔事件は少しだけ起きているといういわゆる『悪魔憑き無法地帯』の市。この市にPCメンバーの中で唯一セラフィムと繋がりのある春日輝が、セラフィム支部を設立する為に菊千代をつれてやってくることから物語は始まります。収録されているのは全部で3話。「ミッション01 今日から僕は、知らない街で。」「ミッション02 今日から僕は、スカートを。」「ミッション03 今日から僕は、極道と。」となります。
「ミッション01 今日から僕は、知らない街で。」では、文字通りの知らない街にやってきた輝が他の仲間となる蕾花、律の2人と出会い、以後、協力するようになるまでの顛末の話です。我が道を往く我侭極道お嬢様の恐れを知らぬ傍若無人ぶり、律の「お嬢至上」的な思考、そんな2人に振り回される形の輝の慌て様、それら3人を見ながらトカゲの身でありながら一番落ち着きのある振る舞いを見せる菊千代と、新物語スタートながら、それぞれの特徴的なキャラクターを読者に知らしめるという意味では充実した内容でしたね。戦闘も、序盤とは思えない強敵がいきなり登場しながらもダイスの女神の助けを受けて難無く乗り越えていて、派手さ、爽快さ共に良いスタートダッシュを決めていたと思います。
「ミッション02 今日から僕は、スカートを。」では、GMの狙いである女装少年による潜入捜査という、ある意味で王道化しつつある展開ですが面白みの多い内容でした。登場するNPC―――黒鳥麗奈も事前の振りの甲斐もあり、おいしい役所としてPCメンバーを色々な意味で追い詰めていました。流石女学園…流石やで…!
「ミッション03 今日から僕は、極道と。」ではヤクザの抗争に悪魔憑きが関わっているとこうなる、というような感じで、これまでの前2話と繋がりがありながらもまたひとつの別の出来事、となっています。
どの話でも通じて言えるのは、PCのメンバーが個性がありすぎる、ということでしょうか。普段の言動もさることながら、衝動表の結果の面でも面白い所をここぞという所で引き、それをキッチリ後々の展開での話などにまで引き継いでいるのでシリアスシーンが一瞬で崩壊するという、TRPGならではの醍醐味を見せていました。生死を彷徨う部下の元に駆けつけて、部下が目を覚ました所で「ばぶー」は無いわぁ・・・!(笑
総じてこの作品は、基本に忠実―――という意味では前作の「デモンパラサイト・リプレイ ぬぎぬぎアクマとぱくぱくデーモン」に通じる所のある、笑いと熱血の比率の良い、良作だと思います。PCキャラクターたちによるロールプレイングの上手さがこの作品最大の魅力です。全体的に見れば若干御都合主義で話を突き通してしまう面もありましたが、それを差し引いてもこの作品を読んで損はさせない、と思えるだけのものがあると感じましたね。