会長の切り札

会長の切り札 一芸クラブに勝機あり!

著者・鷹見一幸先生。挿絵・KeG先生。鷹見先生は「時空のクロス・ロード」シリーズ(電撃文庫)でデビューして、「でたまか」シリーズ(スニーカー文庫)「銀星みつあみ航海記」シリーズ(スニーカー文庫)「ネオクーロン」シリーズ(スニーカー文庫)「ガンズ・ハート」シリーズ(電撃文庫)「小さな国の救世主」シリーズ(電撃文庫)「リセット・ワールド」シリーズ(電撃文庫)など多数の著作を持たれています。KeG先生は「緋色のルシフェラーゼ」シリーズ(富士見ファンタジア文庫)で挿絵を描かれている先生ですね。
・登場人物
楢山高校勢は生徒会長でヒロインの強気なポニテ少女、早乙女朋絵。副会長で朋絵曰く「やればできる男」で、実際に中学生時代、遭難したバスから級友や教師を先導して無事、助け出した実績を持つ所光明。生徒会役員の一年生で双子の姉妹の北条芽衣、北条麻衣。地方スーパーの跡取り息子でそそっかしい性格をしている宇佐美健一。二年生の学年総代、山仲鹿子。元応援団で、現在は廃止された応援団を1人で維持しているがかつての応援団廃止気運に腹を立て、それ以来『昔ながらの不良』姿をしている応援同好会会長の霧島慶児。霧島の幼馴染で文芸部部長の長篠芳江。他、ローカルクラブの面々―――忍者研究会、漫画・アニメ同好会、サバイバル同好会、買い食い立ち食い同好会などの会長など、多種多様なキャラが登場します。
対する敵役、樫森高校勢は生徒会長で質実剛健を地で行き、愛馬磨澄号(するすみごう)を駆る真行寺正行。真行寺の懐刀、副会長の本俵寿明。
そして敏腕地方役員であり、作中で行われる高校統廃合を光明との共同案で戦国合戦風に仕立て上げた、物語の仕掛け人、藍山真由子。
・シナリオ
楢山高校・生徒会長の朋絵は頭を悩ませていた。高校統廃合の新たな条例により、学校の存続が高校生同士の勝負によって決定されることになったのだ。ところが相手は文武両道の熱血男子高校、対する楢高はゆる〜い校風の共学校。生徒たちのやる気はゼロ、諦めムードが漂う生徒会—しかしその時、切れ者副会長の光明だけは、役立たずの同好会に活路を見出していた!これぞ現代版国盗絵巻、高校生たちの熱き合戦がここに火蓋を切る。(7&YHPより抜粋。)
・感想
今までの作品ではIf世界や現代物語でも架空の国、別次元の世界、近未来的な荒廃した世界などを舞台にした物語を書かれていた鷹見先生による、現代そのもの、日本そのものを舞台にした学園物語作品ですね。数多くの著作を持つ鷹見先生の、初の現代学園物、ということになります。
高校統廃合の新条例により、自分たちの学校が無くなるかもしれないという状況になった3つの高校―――楢山高校、樫森高校、桜川女子高校の3校が、廃校になる1高を高校生同士での決着によって統廃合の行方を決する事になったが、目立つ所の無い楢山高校の存続は風前の灯であった。生徒会長である早乙女朋絵は楢山高校の存続を望んでいるが学校全体の気風としてはどうにでもなれであり、諦めムードが漂っていた。そこで朋絵は、副会長で幼馴染である所光明を巻き込む形で楢山高校存続の為に活動を開始する。最初の相手は質実剛健指導力のある生徒会長の下、統制の取れた樫森高校―――果たして楢山高校は存続を勝ち取る事が出来るのか!?この作品はそんな物語です。
基本は方針を決める朋絵、策を練る光明、協力する生徒たち、という三様で物語が進められます。
見所としては、弱者側である主人公勢―――楢山高校が、正面から突撃してくる樫森高校を相手に色々と戦術を練り、罠を張り、奇策をかけて対抗する―――その様子が面白いですね。天気任せな策でそれが駄目だったら次の手が無かったりして、光明は楢山の諸葛孔明と言うには詰めが甘かったですが、人と渡りをつけ、手を借り、人の心理を逆手に取った罠を張るなど読んでいて面白い展開が多かったです。
また鷹見先生の御家芸的な作風―――ストレートな感情を発言させる―――その手法はこの作品でも健在で、読んでいて背中が痒くなるような正論が光ります。こうゆう真正面からの真っ正直さが、鷹見先生の作品の魅力でもありますよね。
総じてこの作品は、高校生による軍略物―――という体裁を取った戦国祭りイベント的な、周り中を巻き込んで楽しもう、的なイメージの作品です。その中に高校の存続をかける、という追い詰められた感じが混ぜられています。それが、祭りのような騒がしくも明るい作品なのに緊張感があるというものになっており、読み手に緊張とリラックスを交互に提供する、バランス良くテンポ良く読める作品になっていました。