迷い猫オーバーラン!

迷い猫オーバーラン! 拾ってなんていってないんだからね!!

著者・松智洋先生。挿絵・ぺこ先生。松先生はスーパーダッシュ文庫ではこの作品がデビュー作、ぺこ先生はPCゲーム原画家として、代表作『波の間に間に』『こなゆきふるり』『その花びらにくちづけを』などがあり、スーパーダッシュ文庫の挿絵として『魂振の』シリーズの挿絵などがあります。
・登場人物
主人公、洋菓子専門店ストレイキャッツ兼自宅を守る都築巧。ヒロイン1で巧の幼馴染、言葉に嘘を織り交ぜて喋る芹沢文乃。ヒロイン2で無口だけど手先が器用な特技を持つ、乙女に拾われた家出少女の霧谷希。巧たちが通う学園の理事長の孫娘で、扉イラストの名前と本文の名前が違うと言う離れ業をやってのける(誤字?落丁?)梅ノ森(梅ノ宮)千世。巧の姉で洋菓子専門店ストレイキャッツの正パティシエール、人助けを趣味というか条件反射で行う都築乙女。巧の友人でヲタク少年、通称は『鬼畜の菊池』という菊地家康。菊地と同じく巧の友人で古い柔術家の家系でもあり、古風な話し方をしたりする幸谷大吾郎。
・シナリオ
都築巧は、血の繋がらない姉と二人暮らしをしている。潰れかけの洋菓子店『ストレイキャッツ』店長である姉はお人好しで不器用なドジッ子の為、近くに住む幼なじみ芹沢文乃の手を借りながら何とか店を維持するだけで精一杯の日々。そこに、姉が謎の美少女を拾ってきてしまう。更に学校では巧に思いを寄せる学校一のお嬢様や悪友達と共に新しいサークルを作ることに。しかも巧や少女達にはある共通の秘密があったのだ……!(スーパーダッシュ文庫OHPより抜粋。)
・感想
この作品は『家族』或いは『コミュニティ』がテーマ的な印象を覚えましたね。
物語は洋菓子専門店を自宅と兼用して住む少年で主人公の都築巧が、仲間達に囲まれながら突拍子も無い『人助け』ばかりしている姉、都築乙女に振り回されながらも楽しく生きている日常的なものを書いているのですが、ひとつのポイントとして主要登場人物たちみんなが何かしら『繋がり』に対して敏感、という面をもっています。それは巧と文乃の幼馴染以上恋人未満な関係に敏感に反応した希だったり、姿を消した希を探し回る巧だったり、巧との思い出――ー昔に自分を救ってくれた言葉を今でも大事にしている文乃だったりと、様々な形で語られます。この『繋がり』を書いたのがこの作品だった、と私は感じました。
登場人物たちに関してはそういったテーマになっているものに敏感、という設定があるも基本は普通の学生諸氏ということで、ちょっと話し方が古風だったり典型的なヲタクがいたりどこの世界から引っ張ってきたのかというような天上天下唯我独尊なお嬢様がいたりともしますが、おおむねどのキャラクターも『普通の学生』姿が見られますね。テーマが背景設定にかかった為か、それ以外の背景設定的なパンチが弱いのですが、そのカバーとして性格面や行動力でキャラ付けしているという感じでしょうか。
総じて、この作品は小さな町の洋菓子専門店『ストレイキャッツ』に集まったちょっとした背景を持つ少年少女たちが織り成すちょっとホロリとするような物語を紡いでいく、ヒューマンドラマ的な作品でしたね。
ただ、集英社繋がりという事で規制的なものは無いに等しいのか、或いはかなり緩いのか・・・少年ジャンプのネタがかなり多く登場します。ちょっとした小ネタ的な扱いなのですが、これがかなり一箇所で連発されたりするのでそういった演出を良しと取るか悪しと取るかで、また評価の分かれそうな作品でしたねー。