ナイトウィザード The2ndEdition ノベル

ナイトウィザード The2ndEdition ノベル 冥き迷宮のバーレスク

著者・藤原健市先生。挿絵・みかきみかこ先生。監修・菊地たけし先生/F.E.A.R.。藤原先生は同レーベルで『ミスティックM.A.D.』という作品や『ペルソナ3 オワリノカケラ』『ペルソナ3 シャドウクライ』、近著では『ななてん。』等を書かれ、『ナイトウィザードノベル 鏡の迷宮のグランギニョル』も書かれた、ナイトウィザードノベライズでは2作品目となる方ですね。挿絵のみかきみかこ先生は言うに及ばぬナイトウィザード関係挿絵の3巨頭(石田ヒロユキ先生。ぽぽるちゃ先生。みかきみかこ先生。)のお1人。『うしゃぎ』等のイラストでも著名でTRPGプレイヤーとしては赤羽くれはの生みの親、として名を馳せる方です。
・登場人物
主要キャラは主人公で陰陽師の家系だったが家出して現在は錬金術を学ぶ、『錬金術師/キャスター』1Lvだが、元陰陽師からの転職者ということで6Lv魔法のディヴァイン・コロナを連発できる規格外錬金術師の関西弁少女、亜門光明。ヒロインで世間知らずなお坊ちゃんで色男だが、実は光明にぞっこん惚れている『???/ヒーラー』の深澄優貴。あらゆる意味で意表を突くキャラクター、一見すると幼女なだけの謎の存在、『???/キャスター』ベアトリス。鈴吹太郎社長とかが好きそうなトンでも言動の面白箒、『龍使い/アタッカー』ドロシー。優貴とベアトリスの『???』の部分はこの作品の根幹に関わるところかな、と思いましたので秘匿で。読んでのお楽しみ、ということで。
サブキャラは聖王庁の使徒グィード・ボルジア。光明の錬金術の師、ヴィヴィ。<真昼の月>、世界の守護者アンゼロット。<蝿の女王>こと強大な侵魔の王、ベール=ゼファー。<秘密公爵>あらゆる物事を記した本(現在は一部欠損している)を持つリオン=グンタ。<下がる男>として数多の世界を救った魔剣使い(現在は長年の相棒だった魔剣を失っているが)柊蓮司。柊の幼馴染ではわわ陰陽師、しかし柊の誰にも言えない秘密を知っている<紅の巫女>赤羽くれは。ゲストキャラクター満載、ですよ。
・シナリオ
輝明学園に通う錬金術師見習いの少女・亜門光明は、幼なじみの少年・深澄優貴と再会する。優貴は幼い少女を連れていて、何者かに追われていた。詳しく事情を話さない優貴に一抹の疑念を抱きながらも、光明は幼なじみとして、また同じウィザードとして優貴と幼女を匿うことに。だが、この再会の裏には「冥魔」の脅威による世界の危機をめぐる、ウィザード達と魔王達の思惑が絡んでいた! 2ndエディション初のオリジナルストーリーによるノベル見参!(ファミ通OHPより抜粋。)
・感想
この作品は2ndとなったナイトウィザードの初ノベルということで、色々と1stとの違いが読みながら感じられる作品でした。
バーレスク』とは性的な笑い(艶笑、軽い下ネタの類い)のコントや、ヌードに至らない女性のお色気を強調した踊りを含めたショーのこと(はてなキーワードより)。この作品での『バーレスク』というのは詰まる所は『日常性』のことかな、と思います。
作品ではまず、1stと2ndの変革期となる出来事―――アニメにもなった『皇帝シャイマール事件』。この事が少し書かれ、その事件で各自に起きた事柄が端々に出てきて「かつて何か大きなことがあった」と、シャイマールの件を知らない人にも察せられる書き方がされていました。そういった世界的な出来事を下敷きに少し世界観の説明をした後で、少年と少女の逃走劇がはじまります。
逃走劇―――まさにその名の通り。追っ手から逃れてきたヒロインを、主人公が匿うという流れで主要キャストが揃います。光明、優貴、ベアトリスの3人に続いて、ドロシーが合流する流れになります。光明とドロシーは著者の前著である「鏡の迷宮のグランギニョル」に登場したセクラハ天才陰陽師、亜門天明の関係者と明言されますので前著を読んでいればそういった繋がりも楽しめると思います。
見所としてはやはり謎の少女ベアトリスの秘密と優貴の関係、そして光明のツンデレっぽいヤキモチの焼き方などですか。
ベアトリスの事に関してはどう書いても思わせぶりかちょっとしたネタバレになってしまうのでもう読んでのお楽しみ、ということにしておきますが挿絵の見た目で判断すると思わぬサプライズが待つ、というところですかね。てっきりあの人かと思っていたら実はあの人だったとは…意表を突かれました。
光明はナイトウィザードでは結構意外性の強い主人公、でしょうか。サブキャラクターとしての登場比率、PC2〜3として出やすい錬金術師。さらに関西弁少女と揃っているのに主人公。その分、その活躍は光ります。元陰陽師ということで高い魔力を持つため、ディヴァイン・コロナを使い決戦の場では世界の運命を決する戦いで大活躍しております。そんな凛々しい姿を見せるかと思えば、優貴が女の子と楽しくしていると気持ちをささくれ立てたりしたり、平気で優貴の前でも着替え始めたりとした、優貴とは幼馴染というよりその先にある関係の気安さを見せたりして主人公兼ヒロインの様な、見せ場一杯なキャラクターでした。
総じるとこの作品は『きくたけ作品』であるナイトウィザード・シリーズに相応しい『世界の危機』でした。アンゼロットやベルが関わってきて、さらにそれだけでなく柊やグィードといったナイトウィザード世界の有名人―――そんな彼らが出てくるだけで、物語のスケールの大きさを感じさせます。しかし彼らに食われる事の無いキャラクター性の強い―――アクの強い主要キャラが、物語をどんどん進めていく。そんなグイグイと引き込まれる物語をお楽しみ下さい。