SWRPG2.0 リプレイ たのだん1

ソード・ワールドRPG2.0リプレイ たのだん1

著者・藤澤さなえ先生とグループSNE。挿絵・笛吹りな先生。藤澤先生はソード・ワールドRPGリプレイで『NEXT』と呼ばれるシリーズのGMをされていました。
・登場人物
主要な登場人物―――と言うかプレイヤーキャラクター(以下PC)を演じるのは、完全初心者のヒヨコ君。著者でありそれなりにTRPGプレイ経験のあるさなえこと藤澤さなえ女史。グループSNEの先輩のうー先輩と竹さん。以上4名がPCとして、ルールブックの執筆者でもあるGM田中と遊ぶ姿が見られます。
各自が演じるのは、褐色の肌のツインテールで巨大なアックスを武器にパーティで前線を支えるファイター2Lvで18歳の小柄な怪力ドワーフ娘・チロルがヒヨコ君。
マギテック1Lv/スカウト2Lv/フェンサー1Lvと多芸な、前線でも両手効きで手にしたレイピアで華麗?に戦う二刀流なパーティのシーフ役で、過去に婚約していた相手との結婚式場から逃げ出した経歴を持つ、16歳人間女性のシャーリィはさなえ女史。
種族がナイトメアという突然変異的存在で、月神シーンのプリースト2Lvでファイターも1Lvなパーティの回復役の、整った容貌と自然に出る甘い言葉で無意識にシャーリィを慌てさせる18歳の天然神官、レクサスはうー先輩。
一見2足歩行するウサギという姿の種族・タビットで、ソーサラー1Lv/コンジャラー1Lv/セージ1Lvのパーティの頭脳、魔法担当の自称・稀代の天才魔導士な14歳、ポポ・マチュアルは竹先輩。
以上の4名がメインPCということで、パーティを組んでいます。
・シナリオ
RPGってこんなに面白い! 初心者プレイヤーのへっぽこRPG体験記
RPG大好きっ娘のさなえさんと、彼女に巻き込まれてRPGを始めることになったヒヨコ君の、初めてのRPGプレイ。失敗したり先輩にからかわれながら、元気にRPGしています!(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品はソード・ワールドが2.0になったということで1から「TRPGとは何か?」を説明するという趣旨がよく見えますね。裏表紙にも「RPGはじめて物語リプレイ」とあるのですが、初心者向けの、まったくひねりなどが無い、基本的なTRPGの遊び方からレクチャーしてくれるもの、という内容です。
基本は完全初心者である『ヒヨコ君』に他のメンバー…さなえ、うー先輩、竹先輩、GM田中の4人が基本的なルール説明をしながらキャラクターメイクをし、各自のPCがパーティを組む事になる経緯まで事細かに描き、超・基本的なTRPGの遊び方を2.0になって増えたりした新ルールの解説も含めながら遊んでいる様子を見られる、というものです。「こんな感じにしたらいいよ〜」とか、「これはこういうことだから〜」的な、基本の説明だらけの本、とも言えますので既に2.0を各自で遊んでいる読者などにはわかりきっている事を再度解説される形になります。それを基本の復習と取るか、わかっている事を言われていると不満を募らせるかは、個人の感想次第でしょうね。
さて、作品の内容についてですが。
収録されているのは月刊ドラゴンマガジン5、7、9月号で連載された3か月分+αで、全部で3話プラスおまけコラム的な挿話が3話で計6話、となります。といってもコラムは話数としてカウントされませんので実際には3話、というのが正しいかも、ですが。
第1話「はじめてのくえすと」。これは正に基本中の基本として、あらゆる事を解説しながら進めていく、初めてTRPGに触れる人用に書かれたような話です。内容は街に出てきたばかりの超初心者冒険者であるチロルをシャーリィ、レクサス、ポポが助けてひとつの依頼―――遺跡に行きたがっている男の護衛―――を、するというもの。基本的なやることの説明…危険感知や罠感知などを初めとする『判定のしかた』や敵が出現した時にまずどうするべきか、攻撃したり防御したならその結果をどう出すのか、という『敵との戦い方』というものをレクチャーしながら、『ロールプレイの楽しみ方』というものを各自がそれぞれの状況で演じて見せたりしている、まさに『TRPGを楽しもう!1』といった様子になっています。
第2話「ばんぞくとのたたかい」。これは『キャラクターのレベルアップの仕方』から始まって、2.0になって種族として区分けされた敵『蛮族』の説明と、GMが用意したその蛮族たちを相手にダンジョン・アタックを敢行して(これは割愛されていましたが)、『組織だった敵と戦う』というものが見られます。『TRPGを楽しもう!2』と言うべきですか。また、GMの巧妙な敵の配置と力量はPCたちの隙を上手く突いていてなかなか見事です。
第3話「ゆだんはたいてき」。これは第2話での蛮族との戦いの結果、救助した一人の男性から依頼を受けて新しいクエストに挑むというもの。盗っ人蛮族を追いかけて蛮族たちの住処まで追いかけたは良いですが、そこで油断からパーティ大ピンチ!となるものです。『前のクエストから繋がりができる』とか『イニシアチブを取るのは大事』といった事がわかる貴重な展開が見られますね。
総じて、やはり基本中の基本から入る、ということでスタートは全員1から。敵もゴブリンですとか怪しい植物ですとか、グレムリンですとかの低レベルの敵ばかりです。が、そこはそれ、敵も味方も低レベルですので「攻撃が当たった!」「駄目だ当たらない!」だのといったちょっとした判定でもその結果をそのまま受け入れるしかない為、毎回悲喜交々としている様子が見られてとても新鮮です。高レベルになってくると判定の失敗をカバーできる方法が増えたりしてきますからね。こういった回避しようの無い結果に一喜一憂する様は、初期の低レベルでのプレイング特有の初々しさが良いですね。他にも、藤澤さなえ女史の視点が中心で書かれているリプレイですがその時々のさなえ女史のストレートな感想がそのまま書かれている事が多く、リプレイ日記というかブログを読んでいる気分になります。著者のその時々の新鮮な気持ち―――驚きですとか、関心などが伝わってくる作品でした。しかしそのフレンドリーさは、逆に神経に触ってしまう人もいるかもしれませんね。そこはやはり好みの問題となりますが…。また挿話ではさなえ女史のPCであるシャーリィを作った時の判断材料などが書かれていて、キャラクター・メイキングの手助けにもなる面白い企画だったと思います。パーティバランスを考えるところから始まり、その上でやりたいことを加え、迷った時に参考にした判断材料まで書き込まれており、その後、PCとしてどう作ったキャラを遊ぶつもりでいたのか、その心構えまで―――色々と、至れり尽せりの作品でしたね。