丸鍋ねこ改造計画(仮)

丸鍋ねこ改造計画(仮) (MF文庫J)

丸鍋ねこ改造計画(仮) (MF文庫J)

丸鍋ねこ改造計画(仮)

著者・七位連一先生。挿絵・ぱこ先生。七位先生は同レーベルにて『地を駆ける虹』で第3回MF文庫Jライトノベル新人賞で<佳作>を受賞し、第3作までシリーズで発表していますね。今回の作品は新作、ということになります。
・登場人物
主人公は思い込んだら一直線!という感じのお祭り男、春田リク。ヒロインは無表情で無感動に情動を表にあらわさない、だから主人公のリクに目をつけられる美少女、丸鍋ねこ。
サブキャラクターはリクの男友達の天原昴。リクを慕う小学5年生にして既に魔性の女の片鱗を見せる白崎チカ。これと決めた相手(リク)に歪んだ愛情を注ぐ―――言動不一致の女生徒、蘭(あららぎ)ひょう。ねこに仕える執事役の「じい」。
・シナリオ
絶対に笑わないどころか怒ったり泣いたりもしない、完全無感情なクラスメイトの隠れ美少女・丸鍋ねこ。お調子者の春田陸は、難攻不落の“要塞”とあだ名されるねこをなんとか笑わせてみせようとあの手この手のアホ作戦を計画し、不屈の闘志で何度も彼女にアタックしてみせる。しかし丸鍋ねこにはもう一つ、“災い”と噂される、近づく者に次々と降りかかる不可思議な現象がつきまとっていて…?MF文庫J新人賞受賞作家の新境地は、新人賞投稿時から秘めていた強攻タッチの筆をいかんなく揮うハイテンション野放図コメディ!!包み隠さず大開放。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は一人の無反応美少女を相手に主人公が色々とちょっかいを掛けて、彼女から人並みの反応を引き出そうとする―――要はそういった、小学生的相手との接し方をする主人公の話です。
話の内容はこの「ちょっかいを掛ける」に終始しており、主人公であるリクが恥ずかしがらせようとしたり、笑わせようとしたり、異性を感じさせようとしたり、怒らせようとしたりと、あの手この手でヒロイン―――ねこに何かしらの反応を起こさせようとします。そんな、少年による少女の変化作戦―――それがこの「丸鍋猫改造計画(仮)」ですね。
この話の魅力は「へこたれない主人公」と「変わりたくても変われない理由があるヒロイン」にあると思いました。
まったく反応が無い、自分の行動にもなかなか明確な結果が出ない場合、得てして人はへこたれて当初の目的を見失いがちですが、この作品の主人公のリクはそれでもめげずにあの手この手を模索します。そんな目に見える結果が出ない状態でも自分を曲げないリクの行動派な前向きさは、一見アホな小学生レベルの行動に隠れて見誤りがちですが、一本筋の入った突き抜けた信念の持ち主であることを示していてただのアホではない事を読んでいくと感じさせますね。
ヒロインであるねこはとある理由により自分の感情を表に出そうとしない、出せない状況であり、そんな彼女がリクに関わられる事で徐々にでも普通に感情を出してリクと接していく様は、当初の無反応、無表情と相まって彼女の魅力を引き立てます。惜しむらくは彼女が感情を表に出せない理由というのがファンタジーな理由だったこと―――でしょうか。突然降って沸いたようなその理由は前フリが殆ど分からない程度にしか示されていなかったこともあって、少々唐突な印象でした。別にファンタジーでなくとも現代っぽい理由―――良家の出身なのでお家の騒動に巻き込まれる、とかでも良かったのでは―――と思いましたが、そこは何かしら今後に纏わるエピソードを考えているのかもしれませんので、何とも言えない、というところでしょうか?
総じてこの作品は、小学生レベルで活動する主人公のリクが、その行動力で一人の女の子の問題と相対して解決して少女を変えていく―――そんなボーイ・ミーツ・ガール的な作品ですね。小学生レベルで活動するだけあって、高校生がするとは思えない様々な行為が繰り広げられ、笑いを誘ってくれていました。

但し、これだけは仮面ライダー好きとして否定しておきたい。
―――――――――V3はバッタじゃない…モチーフはトンボだぁぁぁぁっ!!!(力説