鋼殻のレギオス5

鋼殻のレギオス5 エモーショナル・ハウル

著者・雨木シュウスケ先生。挿絵・深遊先生。
・登場人物
主人公は、かつて武芸が盛んな槍殻都市グレンダンで『天剣授受者』と呼ばれる12人の最上級の武芸者の1人にまでなったが、武芸者の誇りを汚す行為で都市を放逐されて学園都市ツェルニで1からの再スタートを志すレイフォン・アルセイフ。ヒロイン1、レイフォンに目をつけて自分の小隊にスカウトした、都市を守りたいという強い意志と信念を持つ普通の武芸者の女生徒、ニーナ・アントーク。ヒロイン2、ニーナの小隊に所属する天才的才能を持つ念威操者だがやる気の無い少女フェリ・ロス。ヒロイン3、入学式で起きた暴動でレイフォンに助けてもらい彼に思慕の念を抱くようになる新入生、引っ込み思案で気が弱いが料理が好きなメイシェン・トリンデン。
サブキャラクターは、フェリの実の兄でレイフォンたちが住む学園都市ツェルニの生徒会長、カリアン・ロス。メイシェンの幼馴染で記者志望の元気娘なミィフィ・ロッテン。メイシェン、ミィフィの2人と揃って3人で交通都市ヨルテムから来た、第17小隊メンバー入りした正義感の強い姉御肌のナルキ・ゲルニ。ニーナが小隊長を務める第17小隊の隊員で軽い性格の狙撃手、武芸者のシャーニッド・エリプトン。元・第10小隊でシャーニッドとの確執はまだあっても武芸者としての矜持などから第17小隊に参加したダルシェナ・シェ・マテルナ。ニーナの幼馴染で武芸者が使う<錬金鋼>のメンテナンスをするハーレイ・サットン。レイフォンの幼馴染、リーリン・マーフェス。リーリンの友人シノーラ・アレイスラ。レイフォンの武芸の師、デルク・サイハーデン。グレンダンの女王アルシェラ・アルモニス。サリンバン教導傭兵団出身でサイハーデン流刀技を使うハイア・サリンバン・ライアなど。
・シナリオ
思いがけない養父の言葉。リーリンは複雑な思いにとらわれていた。本当は会いたい。心から。でも、それでレイフォンが喜ぶのだろうか…。一方、ツェルニではナルキが第十七小隊に残る意志を示す。対抗試合の最終戦、ツェルニ最強の第一小隊との決戦を前に、ニーナは全メンバーでの合宿を計画した。合宿最後の夜、レイフォンはナルキ、料理当番として参加したメイシェンに呼び出されるが、足場が突然崩れ落ち—。レイフォン、そして第十七小隊に最大のピンチが訪れる。それぞれの運命の歯車は音を立てて回り始め…。超快進撃シリーズの第五弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
第5巻は第17小隊が合宿に行く話、そして合宿後の第1小隊との模擬戦闘と汚染獣との戦いの話です。合宿の話としては料理担当として同行したメイシェンや小隊メンバーのニーナ、フェリ、ナルキなどがレイフォンに聞きたい事、言いたい事などを話したり、レイフォンとの練習を通じてレイフォンの実力を実感したり…そんな形でレイフォンが周りとの関係を深めていく、というのが合宿の間続いていく、という感じになっていますね。
その後の第1小隊との模擬戦闘は、第17小隊の新メンバーとして合流するダルシェナを加えて代わりにレイフォンが抜けた状態で、第17小隊が現在どの程度のものなのかが書かれていて、レイフォンがどれだけ戦力の要になっていたかが浮き彫りにされています。それを踏まえて、これからの課題をメンバーに知らしめていました。
そして汚染獣との戦い。この戦いの前に、メイシェンとレイフォンが話をしてグレンダンに来てからレイフォンが感じた事、変わっていった心境などを語り自分が戦う理由を内心で再確認しています。そしてメイシェンはメイシェンで、これまで知らなかったこと―――第17小隊メンバーだけが知っていたこと―――である、『レイフォンが元・天剣授受者である』という意味をレイフォンからの話で聞いて再認識、或いは実感して、その上でレイフォンに対して自分が感じた素直な感情を伝えて一般人でありながらも武芸者であるレイフォンの一端を理解する優しい一面を見せていました。今巻までやや出番の少なかったメイシェンがレイフォンとの関係を深めている、重要なワンシーンがある話でしたね。そんな出来事の後、レイフォンが汚染獣と戦い、ハイアがサリンバン教導傭兵団を率いて汚染獣と戦います。レイフォン個人と汚染獣の戦いと、ハイアが率いるサリンバン教導傭兵団という団体と汚染獣との戦いの2種類が書かれていて、レイフォン…天剣授受者の異常なまでに突き抜けた強さがここでもまた浮き彫りにされていましたね。
そして汚染獣との戦いの最中、電子精霊ツェルニの元に向かったニーナの前には廃貴族が現れ、とても重要な出来事が起きていました。ここも今後に深く関わる重要シーンでしたね。
そういった経緯がツェルニであった時、グレンダンではリーリンがついにレイフォンの元へと向かう意思を固め、放浪バスに乗り込んでいました。いよいよリーリンがツェルニに―――レイフォンたちのいる場所へとやってくるということで、次巻への期待を大いに盛り上げる引きでしたね。
総じてこの巻では、レイフォンがツェルニにやってきて確立していった人間関係を、自分の過去を話したり、相手と戦闘で実際に手合わせしたりして、1人づつ再確認している印象でしたね。その中でも特に大きく取り上げられていたのがメイシェンで、最近はやや影の薄い扱いになっていたメイシェンがレイフォンの過去を知り泣くという、メイシェンの優しさが大きくクローズ・アップされている巻でもありました。