DX・リプレイ・ゆにばーさる

ダブルクロス・リプレイ・ゆにばーさる 〜果て無きカーニバル〜

著者・矢野俊作先生。伊藤和幸先生。藤井忍先生。挿絵・佐々木あかね先生。陸原一樹先生。安達洋介先生。多数の著者・挿絵家先生による、ダブルクロス2ndのサプリメントに収録されている特殊ステージである『アキハバラ』を舞台にしたオムニバス小説―――というか、短編リプレイ集―――ですね。過去、「ライブボックス」という、DXのファンブックなどに掲載されたリプレイなどを文庫化した―――そういった作品です。
・登場人物
古今東西ダブルクロス・リプレイから様々な登場人物が結集します。その幅は広く、1st時代のキャラクターも登場するというお祭騒ぎ振り。PCとして登場するのは合計で8人。
最初に収録されている矢野先生GMの『Chrome Dome』では、1stエディションから加賀十也と、黒須左京たち懐かしのコンビが登場。
次の『災厄の聖杯』では、最初期のDX2ndリプレイ「闇に降る雪」「聖夜に鳴る鐘」の主人公の檜山ケイト、新キャラの頚城智世、神代日向、そして『DX・リプレイ・ヴァリアント』に収録されていた「京城月影抄」の嵯峨童子が。
最後の『ティーパーティーへようこそ』では、『DX・リプレイ・オリジン』シリーズの高崎隼人と『DX・リプレイ・トワイライト』のフィン・ブースロイドの時代を越えたコンビが見られます。
全作品に共通するNPCとして、UGNアキハバラ支部支部長となった薬王寺結希や、FHの名物エージェントの春日恭二などが登場します。
・シナリオ
あらゆる情報と萌えが渦を巻く都市、アキハバラ。その街にはいくつもの知られざる事件があった。高校生、加賀十也と黒須左京のふたりは“夜中に家電製品が盗まれる”という事件の調査中に、驚くべき事態に遭遇する。家電製品が意志を持つ!?それを操る黒幕とは!?果たして彼らの運命は、そして理性は耐えられるのか!アキハバラを舞台とした三本のお祭りリプレイ、ここに登場。あんなキャラやこんなキャラの違う側面、是非お楽しみあれ。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は複数の著者=GMによる、同一ステージを舞台にした短編リプレイ集、というものですね。ある意味TRPGシステム『ダブルクロス』の集大成的な作品でもあります。
ダブルクロス1stのキャラクターを、現在発行中の追加ステージ集「アウトランド」などを用いてサプリメントを適用して、1stのキャラで2ndを遊んでみたり、新旧どころか時代や世界を問わず別々のリプレイの登場人物たちを集めてパーティを作ったりなど、作品紹介にもあるとおりのお祭りリプレイでした。
お祭りリプレイであるため、収録されている作品には『舞台が同じ』や『共通点の無い筈のキャラクターたちがパーティを組む』などのこれまでのリプレイとは違い、オーヴァードである為に背負う十字架、とかレネゲイド・ウィルスが引き起こした悲劇、みたいな ネガティブなイメージ/シリアスな展開 はありませんでした。基本、笑って楽しんだものが勝ち、みたいな展開ばかりでしたね。特に「Chrome Dome」と「ティーパーティーへようこそ」はその傾向が強かったです。「災厄の聖杯」はシナリオクラフト・リプレイという大まかなストーリー以外はGMだけでなく、PCも参加して話を作っていくというものでシリアス部分もありましたが、まぁ基本は、番外編的な後の事は知らない騒いだもの勝ちストーリー、という感じで。ページ数の内訳は「Chrome Dome」が2、「災厄の聖杯」が6、「ティーパーティへようこそ」が2、というところでしょうか。
総じるとやはり登場人物が多岐に渡り、これまでのダブルクロスシリーズのリプレイ作品を全て読んだことがある、ディープでコアなファン向けのリプレイとなりますか。突然これから読んでも楽しめるは楽しめるでしょうが、登場人物たちの設定を理解しきれず、「このキャラは何を言っているんだ?」というような状況になってしまうと思われますので、ご新規さんには敷居が高いかと。しかし逆に言うと、昔からDXになじんている人たちなら懐かしさに浸りながら彼らが織り成す新たな物語を楽しめる、という一粒で二度美味しい作品になるでしょうね。