DX・リプレイ・エクソダス

ダブルクロス・リプレイ・エクソダス1 悲しきランナウェイ

著者・伊藤和幸先生&F.E.A.R.。挿絵・しのとうこ先生。伊藤先生は前作であるリプレイシリーズ『ダブルクロス・リプレイ・アライブ』にてPCをされていました。今回はGMとして参加、執筆者でもある、ということですね。挿絵のしのとうこ先生も色々な作品でPCをされていますが、TRPGシステム『ダブルクロス2nd』のメインイラストレーターということの方で有名ですかね。
・登場人物
矢野俊策先生が扮するはPC1、『ブラックドッグ/バロール』の重力と雷で戦う白兵型キャラクター、元陸上部だったが身体を壊して退部してからは不良学生をしていたが、突然誘拐されてファルスハーツの組織『ファントムセル』によってXナンバーズと呼ばれるレネゲイドウィルス感染型強化人間の最新型『X09』にされた諏訪原真也。藤澤さなえ先生が扮するのはPC2、『モルフェウスノイマン』でDロイスが対抗種というギミックも持つ大鎌で戦う前衛キャラ、占い師志望であった為にファントムセルに言葉巧みに誘われて拉致され、Xナンバーズ『X08』とされてしまったが、そんな逆境でも底抜けに明るく振舞える元気娘なエミリア・ラウラ。しのとうこ先生が扮するPC3は、『ハヌマーン/エンジェルハイロゥ』の光と風を操る中遠距離型の射撃キャラ、元・世界的ピアニストだったがその実力を買われてファントムセルに誘拐され、Xナンバーズ『X05』とされてしまったアイヴィ・ノールズ。最後に鈴吹太郎社長が扮するPC4は『ブラックドッグ/モルフェウス』の、間接攻撃型だがその真価はDロイスで得た能力『砂使い』でパーティーをサポートするところで発揮される、Xナンバーズ『X02』という最初期のXナンバーズとして旧型な部分が見受けられるという設定から身体の各所をサイボーグ化している、パーティーメンバーを引っ張っていく大人役のガブリエル・ガルシア。以上4名がPCです。
NPCとして登場するのは、PCたちを助け、先導し、時に助言するXナンバーズ『X06』ことピクシー。世界観の共有からアライブシリーズで活躍した九条柳也。真也の旧友で陸上部の学生、亮太など。
敵としてはガブリエルと因縁のあるX03のベルトルト・ダウン。エミリアと旧知の仲だったX04のマーク・ブロウズとX07のニーラム・アールティ。Xナンバーズの開発者であるマッドサイエンティスト、プロフェッサー・アマガ。X島を管理所有していた組織『ファントムセル』の重要人物、マスターファントム。などが登場しますね。
・シナリオ
諏訪原真也はごくごく平凡な高校生。学校へ行き、友達と遊び、勉強や部活に悩む、普通の生活を送っていた。だが、ある日。彼は目を覚ますと、絶海の孤島に拉致されていた!真也を拉致した組織―――ファントムセルは彼に言う。お前は超人<オーヴァード>になったのだ、と。変貌した世界に困惑する真也。しかし、そんな彼に手を救いの手を差し伸べる者たちがいた。日常を取り戻すための脱出劇が今、始まる!!
新鋭・伊藤和幸が贈るレネゲイド・アクションRPGリプレイ、新シリーズ覚醒!(裏表紙より抜粋。)
・感想
TRPGシステム『ダブルクロス2nd』による新リプレイシリーズ、その第1巻です。
この作品ははっきり言ってしまえば「ダブルクロスサイボーグ009とかやってみよう!」です。謎の組織に拉致され、改造されて超人<オーヴァード>になってしまったPCたちが、隔離施設である『X島』から脱出する様子を描いた第1話『目覚めの刻〜Encounter〜』と、脱出した後、PC1である真也の故郷である日本に帰って、しかしそこで組織の追っ手にかかる話である第2話「迫り来る闇〜Chaser〜」の2話が収録されています。
第1話はPC同士の出会いの話であると同時に、超人の事を知らないという設定のPC1に力の説明をしたりしながらX島を脱出する為に行動しています。協力者であるX06ピクシーを助けに行ったり、エミリアと仲の良かったX04のマークがPCたちの脱出阻止のために動くのでその相手をしたりなど、X島を中心に話が進み、そこからPCたちはどうやって脱出するのか!?という形になっていますね。コードナンバーで呼ばれる実験体である国籍も年齢もバラバラのPCたちが、自由を得る為に協力して組織のアジトから脱出する―――そういう進み方で、この辺りは前述したようにかなり「サイボーグ009」っぽいです。リプレイのタイトル通り『脱出<エクソダス>』する事から始まっている、シリーズ第1話に相応しい展開でしたね。
第2話はX島から脱出した後、日常生活に戻ろうとするPCたちに組織の追っ手がかかる―――という話で、日常を人質にして組織へ戻る事を強要する追っ手に対してPCたちがどう出るか、というのがこの話の肝ですね。追っ手を説得して共に逃げようと言う者もいれば、人質を見捨てて町から脱出するのが犠牲を最低限にする手段だ、と言う者もいる。果たしてPCたちが取る決断は―――!?と。その別の面ではUGNが接触してきて九条柳也が登場し、連続でリプレイシリーズを読んでいる人へのサービスもあったりと、なかなか心憎い演出が見られます。
話で展開されるバトル部分に関しては、第1話は初期戦闘ということもあって、行使されるエフェクトなどもまだ数が少ない印象です。それだけに威力なども爆発的には高くなっていませんが、その分要所要所で使われるエフェクトのタイミングなどがGMもPCも良く考えられていて、「このタイミングでそのエフェクトではこちらは妨害できない!」と言うような絶妙なところで使われるエフェクト、というのが見られます。この辺りは高レベル域では見られない、数少ない手札をどう使うかをGM、PC共に頭を捻っている部分でそこだけでも見ていて面白いですね。
また、この作品は基本テーマが「『サイボーグ009』や『仮面ライダー』のように、突然日常を奪われてなお、敵の支配から逃れる為に戦う」で、PCたちもそのために行動しています。ですので前述した009やライダーにあるような「非人間になってしまった悲哀」や、「狙われる存在ゆえに安住の地が得られない」などの重いバックストーリーが、これから先のストーリーにどう関わってくるのか見物ですね。