パラレルまりなーず

パラレルまりなーず (GA文庫)

パラレルまりなーず (GA文庫)

パラレルまりなーず

著者・木野鋼一先生。挿絵・シコルスキー先生。木野先生はこの作品が本格的ライトノベルデビュー作だそうですね。シコルスキー先生は電撃文庫レーベルで「十四番目のアリス」シリーズ、スーパーダッシュ文庫レーベルの「カンピオーネ!〜神はまつろわず〜」などの挿絵を描かれています。
・登場人物
メインキャストは主人公の久瀬大地。ヒロインの三崎卯美。大地が平行世界の自分に守れといわれて託された、まりな。卯美の平行世界での同位体である魔法少女のシィ。格闘少女の華衣。発明少女のメーア。
まりなを狙う多数の1人である、シエラとスフィリカル・ビーン。平行世界の久瀬大地である、魔法を使ったりして大地の前にまりなを守っていた『風来坊』。
・シナリオ
幼馴染みの卯美と二人、一つ屋根の下で暮らすことになった高校一年生の久瀬大地は、ある日突然、異世界に呼び出された。「コイツのこと、よろしく頼んだぜ」風来坊と名乗る“自分”に、ぬいぐるみを抱いた小さな女の子・まりなを守れと言われた大地。元の世界に戻った彼らは、次々とハチャメチャな事件に巻き込まれてゆく。まりなを狙う異世界からの刺客に、大地たちは不思議なぬいぐるみの力で対抗。パラレルワールドから次々と呼び出される卯美の同一体は、魔法使いに格闘少女、科学者とバラエティー豊かすぎ!?まりなに隠された力とは?恋に魔法にアクションてんこもりの痛快学園ファンタジーここに開幕。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は異世界からの資格を相手に主人公とヒロインが、不思議な力を持つとされる護衛対象を別世界の自分を呼び出して護衛する―――そんな話です。ですのでどこまでも受身で、「敵が来る から 迎撃する」そんな繰り返しですね。しかしそれ以外でも別世界の自分を呼び出してその能力でちょっと活躍してもらったりして日々を送っていたりしますので、バトルバトルの連続、というわけではありません。むしろ、バトル部分よりも日常風景の部分の方が圧倒的に多いですね。
この巻は所謂続刊モノらしく、この巻では主要な登場人物の紹介で終わっています。まりなが何の秘密を持っているのか、どうして狙われるのか、そもそもどれだけの数の敵に狙われているのか、さえこの巻では明らかになっていません。主人公や読者視点ですと、何故かまりなが狙われる、ということしか分からないまま話を追いかけていくことになるのでその辺りにストレスを感じてしまったら、この作品は少々読みづらいものになるかもしれません。
しかしながら、話は前述したように日々の風景が多い―――その中に同位体たちが絡んでくる―――ので、コメディ色は強いですね。変身ヒロインモノ的な一面もありますので、呼び出した同位体たちが繰り広げる活躍や時に起こす騒動が全て、呼び出している間は姿が変わっている卯美のしたことになっているなどの周りの人たちの認識の違いなどもまた、楽しめるかと思います。
ただし、この作品の設定には根本的な矛盾を感じました。所謂『平行世界』―――それをキー・ポイントとして扱っているのですが―――今いる世界以外での他の自分…『同位体がいない』という設定は、平行世界の根幹を覆してしまう矛盾かと感じました。平行世界の設定が用いられている形の上で『同位体が存在しない』となりかけたなら、最初の一人が消失しかかった時に可能性が分枝し、『同位体がいなくなってしまった』平行世界と『同位体が存在している』平行世界とに進む平行世界が分枝するのではないかと思うのですね。そうすることで同位体はまったく減っていない世界が存在するのでは、と思ったのですが………。そんな感じで無数に分枝していくのが平行世界の概念だと私は思っているので、この作品の大元である「平行世界に関する概念」が私の認識とずれている感じがして、矛盾―――少々の疑問を思うところのある作品でした。