小学星のプリンセス☆

小学星のプリンセス (小学星のプリンセスシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

小学星のプリンセス (小学星のプリンセスシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

小学星のプリンセス☆

著者・餅月望先生。挿絵・bb先生。ヒロインが10〜12歳程度のロリコン体型宇宙人の17歳という、トンでも設定でのラブコメ・ストーリーですね。
・登場人物
主人公で一般的高校生だがちょっと優柔不断な小心者、守本貢。ヒロインは他星系『小学星』の人類である『小学星人』でその星に存在する国の第3王女であり、5年前に地球に来ていた時に貢と婚約したと思い込んでいて、5年経った現在、貢の元へ嫁ぐ為にやってくる夢見る一途な女の子、ルリス・ファル・ステファノス
サブキャラクターは貢のクラスの委員長で関西弁を話す、典型的『関西人』という性格の葛木由月。ルリスの友人であり気心の知れた親友であり元養育係であり、現在は宇宙放送局で支部長を務めるエパナ=タスタシ・ファル・スキウーロス。貢、ルリスの学校の担任で一見しっかりしているクール・ビューティーだがその本質はドジっ娘の真田美香。
他には政府関係者、などが出てきますかね。
・シナリオ
高校生・守本貢は、久々に小学校時代の大親友ルリスと再会する。
でも、彼女はあの頃と同じ姿のまま!?
ルリスは幼い容姿のまま成長しない人たちの惑星、小学星のお姫様だという。
しかも、5年前に貢からプロポーズされ、花嫁修業のために地球に戻ってきたって!?
そんな覚えのない貢の動揺をよそに、ルリスと貢の同棲生活が始まる!!(スーパーダッシュ文庫OHPより抜粋。)
・感想
この作品は設定こそトンでも系で、ヒロインが小学生にしか見えないとか、宇宙人な某国の王女が主人公の元へ同棲の為に転がり込んでくるとかの、主人公に都合の良いように見える御都合主義展開が目白押しの作品ですが、その実、内容そのものはラブ・ストーリーに重点を置いたラブロマンス作品ですね。イメージとしては、トンでも設定による『ローマの休日』みたいなもんでしょうか。
心の奥底では好き合っているんだけど、それを自覚しているヒロインとまだ自覚までしていない主人公とに心の擦れ違いがあるのですが、巧妙なまでのストーリー展開がそのじれったさを助長して、読み手に2人の擦れ違いっぷりを楽しませてくれます。
見た目が小学生であるルリスだけに、同棲状態にあると知られてはいけないと考える貢。周りに知られて何の問題が?と考えるルリスと貢の、当初は些細な認識の差でしかなかったそれが、ストーリーが進むに連れて少しづつ、ルリスにも貢にも心の変化をもたらせて行く過程はとても丁寧な積み重ねで話が進んでいきましたね。ちょっとした事での違和感などをばら撒いておき、それをひとつのイベントを通じてルリスに自分と周囲の価値観の違いに気付かせながら、そのイベントを貢視点ではコレまでの自分の態度を反省してルリスとの関係に一つの決意を持たせるものとして、結果的にはルリス視点ではマイナスベクトルでのイベントに、貢視点ではプラスベクトルのイベントにしていて、そんな2人の擦れ違いがまた別の事件を起こして―――と、2人の心の動きがとても複雑ですが見事に絡み合っていて、見事でしたね。
総じてこの作品はトンでも設定のラブ・ストーリーですが、コメディ比率多目ながら、実際に目を引くのはルリスのいじらしさや、貢がこうと決めた後の行動の見事さという、コメディ要素の無い部分でした。詰まる所この作品は、トンでも設定を除けば後に残るのは主人公とヒロインの心の推移が丁寧に書き出されている物語、というライトノベルでは珍しい『ラブ・コメディ』ではなく『ラブ・ロマンス』の作品ではないでしょうか。