シャムロック8

シャムロック the PrivateEye (GA文庫)

シャムロック the PrivateEye (GA文庫)

シャムロック the Private Eye

著者・沢上水也先生。挿絵・西脇ゆぅり先生による、GA文庫創刊時に刊行された作品の1つです。沢上先生は他作品として徳間デュアル文庫から「舞−乙HiME列伝」などの作品を出されていますね。挿絵は番外編だけ本編とは別の人が担当ということなのでしょうか、すぎやま現象先生が担当されていますね。
・登場人物
本家シャムロックと基本は一緒ですが、微妙に背景というか立場だけが違う、という感じですね。マッドサイエンティストがただの傍迷惑だけど天才な学生だったり、ちょいエロ天然天才娘はやっぱりちょいエロ天然天才娘だったり、PP―――プライベート・ポリスはありますがシャムロック・カウンシルが存在しなかったりする一方で、藤堂家はやっぱり大財閥で乱菊はそこのお嬢様だったりするのは変わらなかったりと。
・シナリオ
ようこそ、天園高校探偵部へ!そう、ここは十六夜学院も新相武市も存在しないちょっと平行世界なシャムロックワールド。あ、そうそうシャムロック・カウンシルも存在しないんでした。それならばさぞ平和な学園生活が繰り広げ…られないのがシャムロック!全国統一模試の試験問題を盗んだ疑いをかけられる恋歌、天園高校バスケ部エースの舞を狙った爆弾事件、そして突然消えた御堂凛子の行方は…。そんな難事件を、あの桂一が探偵として解決するというのだからタダで済むはずがない!「無理っスよ!絶対無理っス!」「…馬鹿か、君は?」助手・クリスの受難は続く…。(7&YHPより抜粋。)
・感想
パラレルワールド作品と言いますか、スピンオフ作品と言いますか。本編第5巻の短編集で「名探偵はお見通し」として収録されていたおまけ話の、久我原桂一が探偵役に、東雲クリスが助手役となって進んでいたミステリー仕立ての話の世界観を、1冊の本にしてしまった―――そんな感じですね。おまけの方ではチョイ役のメイドだったりした他の登場人物を元々の采配に戻し、その上で桂一やクリスを学園の探偵部として配置。無理の無いように辻褄を合わせたりした結果が、この作品―――そんな、二次創作作品的な舞台での話という感じです。
とはいえ、書くのは原作者本人。所謂アンソロジー本のような多数の作者がシャムロックの世界を書いたもの―――という訳ではありません。
本人も認める番外編作品であるだけに、登場人物たちの性格などは変わっていないのですが、本家ではぶっとんだ世界観―――ディストピア的世界観の中だから目立たないと言うか、その世界に溶け込んでいた登場人物たちが、この番外編では至極普通に見える世界でそのぶっ飛んだ行動を取ったりする物だから、その齟齬に笑いを引かれますね。
ただ、別背景での話ではあるのですが、やはりパワード・エプロン・ドレスが登場したりもしますのでそういった桂一の開発するオーバーテクノロジーが普通に出てくるようになると話は本家に流れてしまうでしょうから、それをどのあたりで抑制して押さえるかが今後の番外編シリーズとして確立できるかどうかの瀬戸際になるのではないでしょうか。
しかし基本的にはお笑い系で、その裏側で実は進行していた何かの暗躍的な存在を、登場人物たちがその性質で持って暴いたりとかするのは本家とは変わりませんが、軽いノリはこちらの方が顕著であり、また作品自体も短編連作形式で綴られているのでとても読み易くはありました。