死神ナッツと絶交デイズ

死神ナッツと絶交デイズ (MF文庫J)

死神ナッツと絶交デイズ (MF文庫J)

死神ナッツと絶交デイズ

著者・早矢塚かつや先生。挿絵・夕仁先生。早矢塚先生は第2回MF文庫Jライトノベル新人賞「佳作」受賞作家で、著書に「悠久展望台のカイ」というデビュー作があります。夕仁先生はHJ文庫の「螺旋の国の3ドリル」の挿絵などを描かれていますね。
・登場人物
主人公で、2つの世界を行き来できてしまう小石川幌右。ヒロイン1で夢で未来を見る能力を持つ嘉島椎夏。ヒロイン2で口癖は「ぜっこーだ!」の転校生で椎夏の親戚で“だいしんゆー”である通称『絶交少女』、星澄夜空。夜の学校で幌右が出会った謎の少女、死神ウォルナッツ。幌右の友人で椎夏、夜空と4人でいることの多い真谷仁。幌右の妹で心配性の小石川衣沙。
・シナリオ
小石川幌右(ホロー)は妹の衣沙と二人暮らしの平凡な高校生。ホローは毎夜、無人の学校に忍び込み、教室に現れる少女・死神ウォルナッツと無駄話をして楽しんでいる。そんなホローの身の回りは、最近やけに騒がしい。“未来を夢見る”クラスメイトの嘉島詩夏、詩夏のだいしんゆーである通称“絶交少女”星澄夜空。できたばかりの仲良しグループで過ごすそれなりに楽しい毎日、変わることのない日常。平凡で平均で平穏な、17歳の夏を迎えるはずだった。それがまさか、こんなことが起こるなんて―。詩夏と夜空、二人のちょっと変わった女の子のうち、どちらを選ぶ?これはそんなオイシイ話なんかじゃない。二人の命がかかってるんだ。(7&YHPより抜粋。)
・感想
これは2つのよく似ているけど状況の違う世界を行き来する事で、望む現実を手にしようと奮闘する少年と少女の話ですね。何故か世界が分岐し、ヒロイン2として紹介した星澄夜空が交通事故で死ぬ未来と、その夜空を庇って椎夏が死ぬ未来とを前にした幌右が不思議な体験をし始めて、死神ウォルナッツの導きで全てが幸せになる世界―――誰も死なない世界を求めて、幌右は2つの世界を知る存在として奔走する―――そんな、世界を越えた青春群像劇的な話です。
通常の未来―――交通事故に会い、椎夏の目の前で夜空が死ぬAの世界。
未来を知っている為に、夜空を庇って椎夏が死ぬBの世界。
そのAとBの2つの世界を何故か行き来でき、1日置きにどちらの世界も体験する幌右。その状況が未来を確定しようとする選択を幌右に迫っているのだということを、夜の学校で幌右はウォルナッツに知らされる。その状況から彼がどちらの未来を選ぶのか、或いは何か別の未来を選ぶのか―――その選択を迫られる苦悩と世界を渡りながら解決策を模索する幌右の姿が特徴的でしたね。
一介の少年が少年らしく悩みながらも、だからこそ選べない未来。グズグズしていると次々と未来が確定してしまい、どんどん悪化していく事態。迫る2人を助けられるタイムリミット。全ての原因を前に、幌右が示してみせるものは―――という感じで、平凡な少年が体験した人の命を前にした不思議な夏の出来事として書かれていました。
究極的な選択―――AかBか。1か2か。―――椎夏か夜空か。その選択を前に、幌右がどんな未来を手にするのかを見てもらいたいですね。