DX・リプレイ・ストライク3 天からの逆襲

ダブルクロス・リプレイ・ストライク3 天からの逆襲

著者・小太刀右京先生。挿絵・石田ヒロユキ先生によるTRPGシステム「ダブルクロス」リプレイ『ストライク』シリーズの完結編です。
・登場人物
プレイメンバーはグループSNEとTRPG界を二分するF.E.A.R社のメンバーで、「ダブルクロス」の生みの親、ゲームデザイナー・矢野俊作先生。ダブルクロス・リプレイ・トワイライトのGMで壊れキャラをやらせれば右に出るもの無しの田中天先生。小説「レンタルマギカ」などの著者・三田誠先生。著者である小太刀右京先生の旧友のスーパーサラリーマン・加納正顕先生。TRPGライターであり魔術考証家でもある三輪清宗先生。第1巻で登場し第2巻では離脱していたPCも再度参加し、5人のPCで次元を超えた世界騒動に巻き込まれていくのがこのシナリオですね。前2巻同様にこの作品でも、様々なサプリメントの出ている「ダブルクロス」の、そのサプリメントを1つずつ用いてキャラクターを作って、オールスター風にパーティを組むというもの。これで、特殊な背景を持つキャラクターが一堂に会してのシナリオが繰り広げられます。
・シナリオ
ついに以蔵たちは時空の壁を越え、勇がやってきたもうひとつの世界“エンドライン”へと乗り込んだ!捕らわれの身となった紅葉を、勇の大事な人を奪還するため、調査を始めた以蔵たち。しかし、信じられない現象が彼らを襲う。…なんと以蔵に惚れる女の子が現われたのだ!妄想は暴走し、現実すらも捻じ曲げる。グダグダっぷりもここまで来れば神の域?プレイヤーもGMもやりたい放題の大惨事系リプレイ、ついにクライマックス。(7&YHPより抜粋。)
・感想
今巻はDXリプレイ・ストライクシリーズの最終巻になります。収録作品は第5話「鏡像の世界で」第6話「さらば、国見以蔵」の2話が収録されていますね。
前巻ラストで他の世界―――複数あるダブルクロスサプリメントのひとつ「エンドライン」と呼ばれる、所謂、敵勢力が世界の実権を握っている世界へ世界移動した以蔵、モルガン、シャル、そして元々の出身者の勇の4人。これに最終巻ということで第1巻で登場した未来世界のサプリメント『TFT』から来たPC、マーヤが合流して、丁々発止の大活劇を繰り広げます。
第5話「鏡像の世界で」では、5人勢揃いしたPCたちがエンドラインの世界で、勇の仲間であり空間を歪める能力を持った三室戸紅葉を敵勢力―――ファルスハーツの元から救うため、以蔵たちが建設中の水上都市に潜入する話です。その中で危ない所で以蔵に助けられたNPC星ヶ丘沙織が以蔵に惚れこみ、以蔵も以蔵で初めてモテた状況に浮かれに浮かれて話がかなり脱線したりしていました。善悪の組織の勢力が逆転している世界がエンドラインであり、そんな逆の価値観での世界でのPCたちの行動は各人の特徴が出ていて面白かったですね。しかしこの話での最大の見所は、以蔵たちと同じように別のサプリメントの世界からエンドラインに来た国見以蔵『軍団』の存在でしょう。レネゲイドウィルスの力で正義の味方になって遊ぶ『マスクドヒーローズ』の世界から来た正義のヒーロー・国見以蔵。平安の時代を舞台にした雅な世界で遊ぶ『平安京物怪録』の陰陽師・国見以蔵。意志を持つ動物となり遊ぶ『カオスガーデン』の世界のゴリラの国見以蔵など、サプリメントの数だけある世界から様々な以蔵が登場し、そして元祖・国見以蔵たちの敵として立ちはだかります。その個性はどれも敵役ながら光っていて、個々人を主役にした物語も見てみたいと思うくらいでしたね。
第6話「さらば、国見以蔵」は文字通りの最終巻で、エンドラインの世界での問題を全て解決し元の世界に戻った以蔵たち。しかしその世界では一般人であった筈の大家の娘の三室戸もみじが、何故かレネゲイドウィルスの事を知っていてそのショックから以蔵たちの前から姿を消してしまいます。最終話はそんな失踪したもみじを求めて探すシティ・アドベンチャーで進み、最終的にもみじに対して以蔵がどんな態度を取るのか、どんな言葉でもみじを説得するのか、が肝になっていますね。また最後の敵に相応しく、もみじにレネゲイドウィルスの事を知らせた敵がラスボスとして登場し、それがラストバトルに相応しい敵と取り巻きで、侵食率が大変な事になって危うく最後の最後でロストするキャラクターが出るか!?という程に以蔵たちと激戦を繰り広げていました。侵食率180%越えで帰ってこれるのは凄いよ…。
総じてこの作品、最初からかっ飛ばす勢いで始まりましたがその勢いが1巻で治まるどころか、巻を追う毎にさらに加速していったような規模や勢いが怒涛の如く鰻上りに上がり続けて最後までいった作品でしたね。
各PCがその場の状況に応じて自分達が思いついた、或いは考えた演出がどれも光っていて笑いを誘い、その上でGMの考え進める本筋にも対応していて文字通り「みんなで進める楽しいTRPG」を体現している内容でした。その分、本筋から脱線してグダグダの会話が延々と続いてしまったりもしていたようですが、それもまたひとつのリプレイの醍醐味、というのは欲目なのでしょうか?
ドタバタで始まり、爆笑の掛け合いで話が進み、ほんの少ししんみりして、最後にはみんな幸せ大団円のハッピーエンド。そんな少年漫画の王道を行くような、熱血と友情と笑いで勝利となった『DXリプレイ・ストライク』シリーズでした。