デモンパラサイト・リプレイ 剣神4

デモンパラサイト・リプレイ 剣神4 挑戦者

著者・力造先生。挿絵・今野隼史先生によるプレイヤーキャラクター(以下PC)たちが「悪魔寄生体」と呼ばれるモノに憑かれる事によって「悪魔憑き」と呼ばれる超常能力者となって遊ぶTRPGシステム、デモンパラサイトのリプレイシンシリーズですね。著者の力造先生はデモンパラサイトの別リプレイ「悪魔憑きの放課後」などの「悪魔憑きの〜」のシリーズもやっており、挿絵の今野隼史先生は「七人の武器屋」シリーズの挿絵などを描かれていましたね。
・登場人物
天然で面白い台詞を放つ主役級として扱われている明坂聡美 女史扮する三男・御剣凪。きくたけリプレイなどで有名でバランス良いぶっ壊れPCをプレイすることでは右の出る者の無いベテランゲーマー・田中天 氏が扮する長男・御剣嵐、「新ソード・ワールドRPGリプレイNEXT」シリーズでGMを務める藤沢さなえ 女史扮する次女・御剣楓、「ローズトゥロード」「無限のファンタジア」というリプレイで活躍している河村有木生 氏扮する御剣颪。この4人のPCでプレイされています。
他に登場するNPCは、御剣一家の長姉だが悪魔憑きではない御剣つむじ。御剣一家の末っ子、凪クンの幼馴染でやはり悪魔憑きの沙織。元・敵だったが今は御剣一家と共に戦う悪魔憑きで、かえでと良い仲っぽいがアフロな頭髪を嫌われている通称ポッキーこと山本流生。
そして敵として今回登場するのは、元・嵐の同僚の太極拳使いカインと、蟷螂拳使いの李炎龍。そして敵となるか味方となるのか、以前の巻で敵として戦い御剣一家の次男、御剣颪と悲しい別れを経た悪魔憑き、前口真耶が再登場します。
・シナリオ
天下無敵の悪魔憑き一家、御剣姉弟は魔剣の欠片をすべて手にし、超巨大共生武装「八岐大蛇」の主となった。そして、真夏。高校生である、凪やかえでにとってはお待ちかねの夏休み。はれて無職となった嵐ともども、のんびりまったり休みを楽しもうとしていたのだが、とんでもない事件がそれを許さなかった。かつて倒した前口真耶が、収容先の施設をデビルズ・ネストの幹部とともに脱走し、明石海峡にかかる橋を破壊したのだ!莫大な報酬で依頼を受けた嵐は、一家をあげて淡路島に飛ぶ。神出づる島、淡路を舞台に御剣一家VS悪魔憑き拳士たちの戦いが幕を開ける。(7&YHPより抜粋。)
・感想
今巻は、GMが作中でも言っている表現ですが「デモンパラサイト The Movie」といったくらいのスケールの大きな、そして戦闘も激戦に次ぐ激戦になる、死力を尽くす戦いですね。
話は、剣神の―――<欠片>『天群雲』に連なる話が一段落し、ロドリゲスをはじめとした敵勢力がすべていなくなって日常を生活しているシーンから始まるという流れです。御剣家長姉、つむじが兵庫県は瀬戸内海の淡路島に遺跡調査に出ていた所、謎のテロ行為により本州と淡路島を結ぶ明石海峡大橋が何者かにより破壊され、本州との経路が寸断されます。折りしもその直前、嵐と颪のふたりは公安から、楓はセラフィムからこのテロ行為に関わっているであろう組織―――デビルズ・ネストの調査を依頼されていた。明石海峡大橋破壊の様子を映していた映像にデビルズ・ネスト所属であり嵐の戦友でもあった男、カインと、収容所から脱走していた前口真耶の姿が映っていたことから御剣一家は淡路島へと渡る事を決める。その中で楓と凪の脳裏には幼い頃、淡路島へと引っ越していった沙織とはまた別の幼馴染の珠生明日香のことを思い起こしていた。彼女の安否は、そしてデビルズ・ネストの目的とは―――といった感じですか。
今巻でも御剣一家のマイペース振りは健在で、爆笑会話を楽しませてくれます。しかしそれ故に状況的にピンチになったりもして、シリアスに魅せる部分でも、ギャグで楽しませる部分でもどちらでも光っていましたね。嵐はアニメ、映画と様々なネタを引っ張ってきて話を脱線気味にしつつも、やはり面白い発言を繰り返してくれました。聖闘士聖矢とかドラゴンボールとか、誰にでもわかりそうなネタながらツボをついていて話題のチョイスの妙を見せます。凪はここぞというところで沙織と明日香に挟まれて主人公を見せてくれます。楓はポッキーとバナナでツンデレ&ハラペコキャラという二重に美味しいキャラを今巻でも見せていましたし、颪は颪で以前立ちかかって消えたのかと思えた前口真耶とのフラグに再度関わり、影の薄いキャラと言われながらも今巻では意外な男らしさを見せて格好良かったです。こうやって、御剣一家のPCたち全員が輝いていました。無論PC以外でも、NPCでは新登場の明日香は重要キャラながら楓、凪、沙織の幼馴染と言う事で凪と沙織の関係に波紋を投げる三角関係キャラとして活躍し、沙織はその影響もあってヤンデレキャラとなりつつあって怖いながらも笑いを覚える展開を、ポッキーはアフロ化してしまったが故に楓に辛く当たられてしまうと言う情けなくも同情を誘う姿を見せていました。ただやはりNPC、この巻でバトルシーンで大きな活躍があったのはポッキーくらいです。それもメインバトルではなく、やられ役、或いは最後の最後で美味しい所を掻っ攫う役という、NPCらしい完全チョイ役でしたね。
敵であるカインと李炎龍はどちらも拳法家というスタンスで、個人で御剣一家全員を一度に相手にできる強力なキャラクターとして書かれていました。李炎龍は蟷螂拳というトリッキーな拳法に、悪魔の力を加えた多大な連続攻撃と範囲攻撃で御剣一家を追い詰め、カインは身を削って爆発的な攻撃力を生み出し、それを太極拳で的確にそして超絶的に打ち込んでくるという、どちらも拳法を主軸に据えた超肉体派の敵として書かれていましたね。炎龍が技の拳法家ならカインは力の拳法家、といったイメージでした。
そんな2人のデビルズ・ネストメンバーとのバトルは、前述もしましたが本当に激戦。短期決着ながらもこれまでに類を見ない決死の苦戦振りでした。連続攻撃に範囲攻撃と攻撃力増加、行動力増加、さらには特殊状態発生による行動の束縛などで、敵味方共に1ターンで全快状態から瀕死状態に、というのはザラでしたね。PCも敵も高レベルになっており、その分色々な技能が掛け合わされて使用される為に戦闘が複雑化しつつある印象です。敵味方ともに一撃で100近いダメージとか、かなりインフレが進んでいる気がしますね…。この辺り、もうこのまま行き着く所まで行ってしまうのか、何かしら対策―――特殊効果などによる単純ダメージの抑制をかけるのか―――などが、今後の巻で気になる所ですね。
総じてこの巻では、前3巻までの話で出た<欠片>を全て集めて『剣神』となった凪を含む御剣一家が、次なる<欠片>に関わるという話ですね。普段過ごす大友市から離れ、淡路島という舞台に移りそこで繰り広げられる陰謀&策謀、それが巻き起こす激闘&死闘。最後に勝ち残り、新たな<欠片>『八尺瓊勾玉』を手にするのは果たしてどちらか。悪魔の力を宿した拳法と御剣一家の忍術とどちらが勝るのか。御剣一家4名のうち3名までが気絶に倒れた時、最後に繰り出された一撃が決するのは御剣の勝利か、デビルズ・ネストの勝利か―――!? 神出ずる島で繰り広げられる激戦の結末は―――!?
そんな激しい戦いの結末は、是非とも自身の目で確かめて欲しいですね。