とらドラ!6

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

とらドラ! (6) (電撃文庫 た 20-9)

とらドラ!

著者・竹村ゆゆこ先生。挿絵・ヤス先生による学園超ド級ブコメの第6作目。ですねぇ。
・登場人物
主人公で三白眼で目つきの悪い家庭的男の高須竜児、ヒロインで手乗りタイガーこと逢坂大河。この二人中心でサブキャラクターに大河の親友で竜児の片思いの相手・櫛枝実乃梨、竜児の友人で大河の片思いの相手、北川裕作。現役グラビアアイドルでクラスメートの川嶋亜美、他にクラスメート数名といった所がメインキャストかと。
・シナリオ
文化祭以後、少し距離が縮まったような竜児と実乃梨。一方、学校内には大河と北村が付き合っているという噂が流れる。そんな中、迫る生徒会長選挙でも本命と目される北村は突然…グレた。それに対して、突き放すような態度をとる現・生徒会長のすみれ兄貴。やたらと攻撃的な幼馴染の亜美。心労で老けていく独身。竜児と大河は北村がグレた原因を突き止め、立ち直らせようと奮闘するが…。すべてが白日のもとにさらされたとき、大河がとる選択は?波乱ぶくみの超弩級ブコメ第6弾。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻はサブキャラクターでありながらキャラの立っている大河の片思いの相手、北村裕作の生徒会長選挙に端を発する騒動の一部始終を書いた巻、といった感じですね。突然の北村の素行不良化。生徒会長選挙からの辞退。さらには家出と、品行方正で生徒会副会長として次期生徒会長候補と目されていた北村が次々とその評判を落とす事を続けていく。それが始まったのは文化祭直後からで、竜児は友人として大河は片思いの相手を心配して、また他のクラスメートなども北村から事情を聞こうとしたりするが北村は話さない。果たして北村乱心の真意は…?といった所になっていますね。
この巻での話、北村の乱心に、周囲の反応が個別でその差が面白かったです。竜児や大河は北村を心配して親身になって相手になろうとする、クラス担任の恋ヶ窪ゆりは大人の立ち位置で一線を引きながらもやはり親身に心配し、北村の幼馴染の川嶋亜美は北村の行為を子供だと半ば侮蔑して厳しく当たる。現生徒会長の狩野すみれはやはり距離を取りつつ厳しく当たりと、作中での精神年齢的に成熟している人としていない人、成熟途中の人とでそれぞれ北村への対応に差があって、それが各自が見てきた人生観みたいなものを感じさせて興味深いです。
北村の乱心に関しては、その行動から原因までもを含めて青春だなぁ、というのが感想。若さゆえに決めかねる自分の行動、そして若さゆえの行動に全てを委ねて玉砕していく姿は、損得よりも衝動的な感情で生きる若者らしさが溢れていました。
そしてこの巻での竜児と大河の立場は、竜児が北村の親友としての自分を振り返りその甘さを自覚しつつも北村を理解しようとする、あくまで親友の立場。大河は北村に恋する少女として、力になろうとしながらも出来ずにいる乙女な姿を見せていましたが、最後には北村の乱心の原因相手に殴り込みをかけるいつもの手乗りタイガーな姿でトリを務めて北村乱心に端を発する物事に華を飾っていました。
総じてこの巻は、普段真面目な生徒が乱心した事で起きた事件の顛末を書いています。その理由は単純で、その解決に至るまでは複雑な一人の少年の恋物語。そしてそれが明らかにした、少女達の本音のぶつかり合いが見られる、そんな作品でした。