神曲奏界ポリフォニカ白4 アニバーサリー・ホワイト

神曲奏界ポリフォニカ アニバーサリー・ホワイト (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカ アニバーサリー・ホワイト (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカ アニバーサリー・ホワイト

著者・高殿円先生。挿絵・きなこひろ先生によるシェアード・ワールド・ノベルス「神曲奏界ポリフォニカ」シリーズの、『白』シリーズで赤や黒の過去の話が繰り広げられるその第4巻。今巻は正月休暇編と高殿先生があとがきで書かれておられる通り、短編集ですね。
・登場人物
この巻は短編集で、それぞれで出番のある人が違うので各話毎にバラバラに書き記しておきます。
第1話『僕の時を刻む神曲』ではメインキャラクター中心という事で、ヒロインにしてメイドのスノウドロップことスノウ。スノウの契約精霊ブランカ。スノウの契約精霊ツクヨミ。スノウが仕える主/お嬢様であるプリムローズ。プリムローズの家に仕える執事でスノウの上司のルーク。プリムローズをライバル視しスノウを馬鹿にするジャクリーン。スノウ、プリムローズの友人デイジー
第2話『セレブレーション・ホワイト』ではジョッシュ。リシュリー。メリディア。新キャラクターにジョッシュの幼馴染のサラサ=シンラ。ジョッシュの養父のタタラ=オキツグ。サラサの実弟ランディ=シンラ、実父ウォルフォス=シンラ。
第3話『金平糖の恋』ではミノティアス。ミノティアスの傭兵時代の友人というかライバル的な狼の精霊ガーグイール。そしてミノティアスが知りあって話を聞き、ダンスの練習相手になってもらう老婦人スミレ=テレナーゼ。
・シナリオ
スノウたちの通う、中央精霊師学院は冬の長期休暇に入っていた。
 生徒達は久しぶりに故郷で休暇を楽しんでいたが、メイドのスノウはそうもいかない。学校に通っているぶんもきちんと働けと、執事のルークに強く命じられていたからだ。もちろんスノウも普段の恩を返すべく働く所存ではあったが、ひとつだけ気がかりなことがあった。そこで彼女は半日でいいから休暇をくれとルークに懇願するが、頑として聞き入れてはもらえない――。
 ルークの過去をスノウが知ることとなる『僕の時を刻む神曲』をはじめ、帰省したジョッシュに起こった物語『セレブレーション・ホワイト』など3作品を収録した初の短編集!(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は、正月休暇を舞台にホワイト・シリーズに出てくる登場人物たちが、どのように過ごしていたかを短編集という事で語っている巻ですね。
第1話『僕の時を刻む神曲』は、ブランカからの指摘でプリムローズの家に仕えるルークに対して疑問を覚えたスノウが、彼の過去を知ることで精霊の有り方の1つをまた知る、という話となっていました。それと同時にプリムローズに婚約話が来ていてその為のパーティが開かれたりして、今後に関しての布石的なものが張られているのも見えました。この婚約相手がこれからの話にどう関わってくるのでしょうね。
第2話『セレブレーション・ホワイト』では、里帰りしたジョッシュが自分の実家で行われる7楽門が一堂に会しての新年の挨拶の場で幼馴染サラサ=シンラに再会するも、『賢者の石』と呼ばれるシンラ家の家宝とこの時代最先端の技術の結晶となる『単身楽団』が登場し、そのことでランディとジョッシュがサラサを通じて対立し、ジョッシュとリシュリーがランディとその契約精霊を相手にしての決死の戦いが繰り広げられる事になります。この話が一番動きが多く、色々と新しく明かされる話もありスノウの持つ怜刀“ささめ”の正体らしきものに関する話など、特に今後に関係のありそうな情報が出てきますね。
またサラサ=シンラの登場により、ジョッシュの契約精霊としても女の子としても一番でありたいリシュリーの前に始めて恋敵という明確な障害が登場した、という風にも見えジョッシュを巡る女性関係が複雑化し、今後のジョッシュが大丈夫なのか色々な意味で不安を覚える展開が見ものでしたね。
第3話『金平糖の恋』では、恋するあの娘をプロムでダンスに誘う為に日夜、特訓と準備に勤しむ牛型の精霊ミノティアスの奮闘の様子が書かれています。この話は白タキシードを調達しようとして関わったひったくり犯を捕まえた結果、ダンスの練習相手も得られてまた一歩、ミノティアスが見事にダンスを踊れるようになる筈のその日に向かって進んだ姿が書かれています。ミノティアスの奮闘振りは一種滑稽なのですが、不思議と彼の努力が報われて欲しいと思えるような、そんな味のあるキャラクターにミノティアスは育っていますね。
総じてこの巻では水面下で何か動いていたりしていそうですが、表層的には『正月休みの各人の過ごし方』的な短編集でそれぞれの話の登場人物たちの特色がそれぞれの話に出ていて面白いですね。しかしただ各話で登場人物たちがそれぞれの自体に動く姿が面白いだけでなく、その裏にこっそり仕込まれたしんみり感とか、しっとり感はホワイトらしい読了後の静かな余韻を楽しませてくれる見事な仕込みでした。

最後に超遅ればせながら
高殿先生、ご出産御苦労様でした&おめでとうございます!