サーベイランスマニュアル

サーベイランスマニュアル (GA文庫)

サーベイランスマニュアル (GA文庫)

サーベイランスマニュアル

著者・関涼子先生。挿絵・真田茸人先生。著者の関先生は、携帯恋愛ゲームのシナリオのライティングや、漫画原作を手がけておられるそうです。
・登場人物
主人公、普通の大学生になる筈だったが寧、巴との出会いで『サーベイランス』となる道に足を踏み込む事になった山咲亮輔。謎の少女、巴と共に亮輔の前に現れた寧。黒コートを着た巨漢の男、厚生保健省のとある部署に所属する英田巴。メインはこの3人で、他の登場人物として涼輔の従姉山咲朝緋。巴や寧の所属する分室の所長、橘美貴。『レックス』感染者で逃亡中の弓槻健治。弓槻健治の子、やはり『レックス』感染者の弓槻宝。
・シナリオ
「わたし、結婚するの」亮輔のもとに届いた、大好きな姉からの報告。結婚相手に会うために仕方なく家を出た亮輔は、突然街に現れた虎に襲われてしまう。すんでのところで2人組―真っ白な服に身を包んだ無口な少女と、大柄で横柄な男―に助けられた亮輔は、否応なく連れて行かれた研究施設で、虎が暴走していた理由を知るのだった。驚異の新型ウイルス「レックス」。感染経路不明、治癒方法不明。感染し発症した者は、例外なくヒトならざるものに変化し、暴走してしまう。少女たちとともに未知のウイルス「レックス」と対峙する道を選んだ亮輔の運命は―。(7&YHPより抜粋。)
・感想
サーベイランス』というのは所謂予防検診というか、「そうならないように予め調べておく」という予防医学のことらしいです。ですのでこの作品のタイトル『サーベイランスマニュアル』は、作品の内容をよく知らせていますね。
話は感染症『レックス』に振り回される人々を書いている、というところです。人を変質させる奇病にして感染症『レックス』。感染者はDNAを変更され突発的に理性を失い獣―――この巻での感染人物は虎―――の姿になる。たまたまその感染者による暴走に遭遇してしまった主人公の亮輔は、そこでレックス感染者を捕まえる厚生保健省・国立予防研究所、感染症予防研究センター分室から派遣されてきた寧と巴に出会い、亮輔はレックスの存在を知りその脅威に巻き込まれていく―――と。
この作品、亮輔の立場は『巻き込まれ型の主人公』なのですが、ただの巻き込まれ型ではないとも感じますね。というのも、亮輔が巻き込まれる原因となったレックス自体が『病』であり誰でも発症する可能性があるものということで、彼が寧や巴に出会い、サーベイランスの道を歩んでいく事になったのは、運命的な出会いでありながらも必然でもあり、と。巻き込まれた形でレックスに関わりその脅威に苦悩し、レックスが引き起こした被害に自分の無力に挫折しながらもまた立ち上がることを選択して最終的にはサーベイランスへの道を自分で選ぶ亮輔の姿は、1人の人間の成長が書かれていて、ただ巻き込まれて仕方なく主人公の道を歩いていくというのとは違い自分の選んだ道を行くと言う覚悟がはっきり見られましたね。
話は最終的には良い方向へ帰結していくので、治癒方法の無い奇病が出てくる話といえど、鬱展開というほどのことはありません。そしてこの巻でこの事件は一応の完結を迎えるも、既に次巻の予定もあるそうで、寧の正体や巴や宝の今後など、まだ明かされていない部分、気になる部分も多く新メンバーを加えて終わるこの巻の先の展開も期待できますね。