NWリプレイ 愛はさだめ さだめは死

ナイトウィザード The2ndEditionリプレイ 愛はさだめ さだめは死

著者・田中天先生。挿絵・みかきみかこ先生。TRPGシステム『ナイトウィザード』の新Verである『ナイトウィザードThe2ndEdition』の初リプレイ文庫作品です。『ナイトウィザード』とは、プレイヤーたちが『夜闇の魔法使い<ナイトウィザード>』と呼ばれる存在となって、夜の闇の中、世界を侵蝕しようとする『侵魔』或いは新Ver『The2ndEdition』から登場の『冥魔』を相手に物語を繰り広げていくTRPGゲームです。
・登場人物
PC側はPC1に『かわたな』の愛称でお馴染み、主人公プレイヤーならこの人の右に出る者はいない田中信二氏扮する新クラス『落とし子』をキャラクタークラスに持つアタッカー、夜見トオル。PC2にはDXリプレイ・トワイライトのギョーム・ド・ノートルダムを好演した細野君郎氏が扮する陰陽師トオル、そして後述の朱野ユリの親友という設定のヒーラー、鳳来寺麒麟。PC3はナイトウィザードの生みの親、全てはこの人が生み出した!の菊池たけし氏扮する精神寄生体という設定の転生者に寄生されたイノセントという、一般人とナイトウィザードが同一人物という異色コンビ、転生者で攻撃魔法担当のキャスター、子ノ日葵&ゲシュペンスト。そしてPC4は王子降臨、頭が高い!(電王風に)クレバー矢野王子扮するは防御特化の魔物使いディフェンダー、防御特化し過ぎていて攻撃力がほぼ皆無との上に特徴が『脳味噌スライム』という、美味し過ぎるキャラでもある正義のヒーロー、通称『勝てないヒーロー・リンカイザー』こと橘輪之助。
他にはヒロインのNPCトオルの幼馴染、麒麟の親友の朱野ユリ、敵か味方か、侵魔の魔王モッガディート、麒麟の師匠でその名も凄いぞビッグ・ザ・陳老師、怪しい言動は田中天先生のシナリオにおける美形キャラの宿命なのかアポロン、リンカイザーの宿敵という触れ込みは如何なる意味か侵魔モーレ・アモーレ、などが登場します。
・シナリオ
紅き月が昇るとき、世界に破滅の危機が訪れる……。魔王との戦いにより命を落とした少年・夜見トオルは、愛する少女を守るため、敵である侵魔【エミュレイター】の力を得て蘇った。だが、現世に舞い戻った彼が目にしたものは――。現代マジカルファンタジーの金字塔たる『ナイトウィザード』が2ndエディションとなって帰ってきた! これまで数々のリプレイで活躍してきたTRPG界の怪人・田中天による2nd初の文庫リプレイ、ここに参上!(ファミ通文庫HPより抜粋。)
・感想
この作品は古典SFから名前や発想を取っているそうですが、元ネタの古典を知らなくても十二分に楽しめますね。というか元ネタなど飾りですか?というくらいにいつもの田中天節を炸裂させてくれています。
収録されているリプレイは全部で2作。第1話で表題作「愛はさだめ さだめは死」と、その続編的位置付けの第2話「禁断の封印」の2作です。完読して思ったのは、どちらにも1つのギミック―――『入れ替わり』が物語のキーになっている、ということですね。
第1話では主人公が物語のキーに深く関わっていて、その状況にどう対応するか、で最終的なシナリオの帰結に変化が起きそうでした。全体的なシナリオの印象は『DX・リプレイ』の『トワイライト』シリーズから田中先生のGMっぷりを見ていたら驚くのではないか、と思うくらいシリアス系の展開で、ラストもほんのり&しんみりで締めていて意表を突かれる面白さです。また、選択の時が過ぎてからGMが明かした中には、最終ボスがPC1という展開もあったそうで、良い意味で容赦の無い田中先生は普段の会話の様子や突発的なPCの提案に対して柔軟に対応したりとアドリブに強い印象を強く受けますが、GMとして色々な状況に対応できるよう用意もしているということでアドリブだけでなく、するべき用意はキッチリしているという几帳面な印象も改めて覚えました。そんな几帳面な印象の田中天GMですが、シナリオは第2話のラスボスを見てもわかるように、多少以上に意外性に飛んでいても『それで皆が楽しめればOK!』という懐の広い所も見せていて、GMとしての力量の高さを見せ付けてくれますね。
さて話を戻して第2話では、スポットが第1話のトオルからユリや麒麟に移った感じです。トオルは第1話の経験から麒麟やユリに同情して力になる、という感じでPC1よりもPC3や4のような、一歩離れたところから協力する、というような印象を受けましたね。どちらかというとPC1はPC2であるハズの麒麟のように見えたくらい、この第2話では麒麟によくスポットが当たっていました。第1話ではトオルを中心に話が展開し、第2話では麒麟を中心に話が展開している。印象としてはそう感じましたね。
また、PC3の子ノ日葵&ゲシュペンストやPC4の橘輪之助などは、それぞれの話で別個に、しかし強力な存在感を持って活躍していました。子ノ日葵&ゲシュペンストは、その特異性の高い立場からシーンの盛り上げに貢献していましたし、橘輪之助は『正義のヒーロー』という立場ながらも脳味噌スライムの特徴で、『愛すべき熱血馬鹿ヒーロー』という見事な味のあるキャラになっていて終始、その行動は笑いを引き起こしていました。あんな凄いMPポーションの飲み方を、私は知らない…!(笑
総じてこの作品は『入れ替わり』を話の鍵にしながら、PCたちが冥魔や侵魔との戦いを繰り広げていく、という形になっていてその『入れ替わり』に関してPCたちがどう対応していくのか。そういった点に注目して楽しむ作品と感じました。しかし『ナイトウィザード』シリーズ…いえ、それに限らず、きくたけワールドから発せられるリプレイの大半がそうであるように、この作品も『笑い』に満ちた作品であり、単純にその話を追いかけていくだけでも十分に面白い、読んでいて楽しい作品でしたね。
最後に注意点をひとつ。この作品は、電車の中で読んではいけません…!私は電車の中で読もうとして、噴き出しそうになって顔がにやけてしまいました。傍から見られていたら危ない人にしか見えなかったでしょう。その点はご注意を…!(ぁ