パーフェクト・ブラッド2

パーフェクト・ブラッド2 恋する魔女と、シアワセの魔法

著者・赤井紅介先生。挿絵・椋本夏夜先生。赤井紅介先生は同社レーベルから「ゼロ・イクステンド」という作品を出されていて、椋本夏夜先生は電撃文庫レーベルで「レジンミャストミルク」シリーズの挿絵などを描かれていましたね。
・登場人物
主人公で、第1巻では瀕死の重傷を負いヒロインの透香と命を繋げて一命を取り留め、実は魔法士である為に戦場で原書と呼ばれる特別な魔導書『バーサーカー』をその身に宿し、修羅場を潜り抜けて透香と互いに相棒となった裕樹。ヒロインで”魔法士”と呼ばれる存在で、一見お嬢様だが実はメイドという2つの顔を使い分ける魔導書『フレイム・ゴースト』を使う女、透華。天才少女で10歳の現在既に天宮財閥を掌握して自身で運営しているお嬢様、天宮雪子。賞金稼ぎ集団”アミュレット”のメンバーで雪子にご執心の大男、石丸。
この巻ではサブヒロインとして、空間に霧や雨を発生させる事のできる魔導書『ブレスド・レイン』を持つ為に犯罪結社に狙われて、アミュレットに護衛を依頼してくる少女サーニャと、そのサーニャを狙う犯罪結社のメンバーとして、タオ、アウレリウス、少尉、マクレガーとそれぞれ呼ばれる魔法士の4人組チームと、セルゲイと呼ばれる個人の魔法士が登場しますね。
・シナリオ
高校生で新人魔法士の裕樹は、繁華街で追われる少女サーニャを助ける。サーニャは助けた裕樹にペッタリで、相棒・透華の視線が痛い。そんな中、サーニャを狙った犯罪結社の襲撃が! 裕樹とサーニャ、二人の原書をかけて、結社の天才魔法士タオとの戦いが始まる! 激闘の中で裕樹が下した決断とは!? 恋と戦いの運命、開幕!!(スーパーダッシュ文庫HPより抜粋。)
・感想
この巻は今巻限りと思われますがヒロインとして登場するサーニャが裕樹に関わって様々な出来事を起こす話、ですね。それはバトルでも然り、恋の鞘当てでも然り、で。
天真爛漫な女の子でダイレクトに好意をぶつけてくるサーニャに、裕樹が押されに押されてしどろもどろ。そんな裕樹の態度が気に入らなくて、ヤキモチ焼きの透香は裕樹にキツく当たりながらも弘樹を気にする。そんな3人を見ていると自分も色々と思う所がある雪子もまた弘樹に好意を伝えてくる―――と、魔法士の話やサーニャを狙う犯罪結社の存在が無ければラブコメ風味の4角関係の出来上がり、といったくらいにこの話では恋の鞘当て的なものが多く繰り広げられます。高校の友人達に裕樹と透香が同居している事を明かして冷やかされるシーンや、寝室で色々とやきもちを妬いた透香の誤解を解こうと弘樹が話をしたりするシーンがあるなど、メインヒロインと言う立場から透香の扱いが圧倒的に多いです。ですが雪子が自分が作った魔導書『鎌鼬』が悪用されている事に心を痛めていることを弘樹に告白したりするシーンがあるなど、透香以外にもスポットは当たっています。そしてやはり、主人公として裕樹を中心に話が展開されていくことが多かったですね。
恋話以外の面では、裕樹が意外と暴走気味だったのが目を引いたでしょうか。発動すると手当たり次第に破壊してしまう事もありえる魔導書『バーサーカー』という、使い勝手の悪い魔導書しか使えない裕樹。そんな彼が、透香に黙って戦いに赴き、ひとりでタオとの決着をつけようとしたりするなど、「力を手に入れたばかりの主人公」らしい独走っぷりが浮き彫りになっていました。そこからの帰結であるヒロイン―――透香の説得で仲間を信頼する、という展開はお約束過ぎるというか、予定調和過ぎて少々間の抜けた展開にも見えましたが、少年コミック的なお約束の踏襲だと思えばそう悪い話の持って行きかたではないのではないかと思います。それで登場した仲間の中に何か裏のありそうなキャラクターがいたりするのもお約束ですね。そんな感じでバトルなどの面では少年コミックの基本を踏襲しているような感じを強く感じましたね。