魔女の生徒会長2

魔女の生徒会長2 超悦者ジュリエット

著者・日日日先生。挿絵・鈴見敦先生。日日日先生は他に同レーベルから「蟲と眼球」シリーズ、ファミ通文庫から「狂乱家族日記」シリーズや角川スニーカー文庫から「アンダカの怪造学」シリーズ、徳間デュアル文庫からは「ギロチンマシン中村奈々子」シリーズなど、数多くのシリーズ作品を出している新進気鋭の作家先生ですね。鈴見敦先生はアニメ化もされた「Venus Versus Virus」作品などを著作に持っておられます。
・登場人物
メインキャストは、ヒロインであり『魔女』と呼ばれる生徒会長の剣シロオ。語り部であり主人公であるがヒロインのシロオからは「認識されない」生徒会メンバーの恋塚ミミクロ。生徒会メンバーでミミクロにはいつも良いようにあしらわれてしまう先輩の『みんなの友達』淀川ドロシー。生徒会のメンバーで陽気な第二大日本帝国所属の『殺人マシーン』骸コロチカ。さらに生徒会入りした訳ではないがミミクロたちの元へよく来るようになった『人斬り少女』陽月オセロ。
今巻での敵役は、表題にもなっている『超悦者』にしてシロオの師匠、先代『魔女の生徒会長』でもある耳寺ジュリエット。その配下の四聖獣、玄武の数戯ヤンマ、青龍の霞クウラ、朱雀の卍スザク、白虎の骸ヴェロニカ。以上の五人が生徒会メンバーと激突する形になりますね。
・シナリオ
『祭よ!宴よ!無礼講よ!殺人以外の一切を許可するッ!』。学園祭の季節が近づき、活気に溢れる帝都世紀末学園。魔女の生徒会長・剣シロオは荒くれ者が集まる『無法地帯』のB校舎に確固とした秩序を築くべく「B校舎最強決定戦」の開催を宣言する。難なくシロオが勝利するかに思われた戦いだったが、そこに立ちふさがったのは国をも支配する権力を持ち、かつてシロオでさえも越えることができなかった圧倒的存在・耳寺ジュリエットだった―。シロオ率いる生徒会が『超悦者』に挑む狂気狂暴狂乱の宴!最高峰のバトル・エンターテイメント第二弾(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻もまた、かなり格闘漫画っぽい仕立てになっています。ただし、格闘漫画の様なノリとバトルの裏には、状況と擦れ違いが許さなかった1人の少女の1人の少年に対する慕情と現実に対する慟哭が隠されていて、名前通りのロミオとジュリエットの如き悲恋が話を進めるごとに見えてきます。激しい戦いの描写を中心として書かれるバトル部分と、過去の回想を交えながら語られる1つの悲哀の話が印象的ですね。
『B校舎最強決定戦』として始まるバトルバトルの連続では、前巻で圧倒的な力を見せていたオセロやシロオが早々と退場もしくは負傷で戦線離脱するなど、なかなか意外な展開が待っています。またその状況からのシロオを除く生徒会メンバーの奔走振り、孤軍奮闘振りは後半におけるシロオの復活劇の良いスパイスでした。
しかしこの作品はやはり、ジュリエットとロミオの状況が許さなかった悲しい恋のお話が中心であり、また一番印象に強く残るものでもありましたね。擦れ違いと思い違い、自分を知らなかったが故に当然の如くして起こった悲劇に対して、ジュリエットは努力し苦労し数多くの苦難を越え、1つの境地へ到達した―――はずだった。しかし、現実はそのジュリエットの苦労を嘲笑うかのように更なる悲劇の現実をジュリエットに突きつけ、ロミオとの歪んだ再会を果たさせる。迎える絶望―――その果てにジュリエットが感じ選ぼうとしたもの。それに対するシロオの絶叫、四聖獣たちの忠心など、クライマックスは心と心のぶつかり合いでいやがおうにも盛り上がりますね。
日日日先生は、兎に角色々と大仰な伏線をばら撒きながらそれを一巻の内で回収してしまうという、当たり前の事を当たり前にできる見事な話作り技術の持ち主ですね。ジュリエットとその配下たちの一挙手一投足の裏に意味が込められていて、それが最後の盛り上げに一役買うなどは基本的な手法ながらきっちり仕込まれていますし、笑い要素も前巻の肝であった実在、非実在を問わぬ剣豪の剣技を大盤振る舞いするなどして交えていますし、本当に読んでいて面白い、漫画的要素の高い作品だと思いますね。