超鋼聖女ベッキー

超鋼女セーラ外伝 超鋼聖女ベッキー (HJ文庫)

超鋼女セーラ外伝 超鋼聖女ベッキー (HJ文庫)

超鋼聖女ベッキー 第一章 オデ娘による福音書

著者・寺田とものり先生。挿絵・Ein先生。知る人ぞ知る懐かしいTRPG『番長学園!!』世界の世界観を引き継いでいる、『現実と似ているけど異なる現代世界』を舞台にして送られる物語「超鋼女セーラ」。これはその番外編、スピンアウト作品です。
・登場人物
舞台は超鋼女セーラより3年前、13歳のおでこ娘の美少女、番長能力で悪魔を退治するエクソシストで生計を立てる中学生の春日井綾乃と、13歳ボディの不思議パワーロボ娘で、電子戦に於いては無類の強さを持ち綾乃をサポートする?クレリック型超鋼女のベッキーの2人が主人公です。
他にはニーソックス好きとか、おふくろの味を追い求める奴とか、悪魔とか、サバイバルゲームから出てきた?みたいな電力料金徴収員とか、やや変体的な登場人物が目白押ししていますね。
・シナリオ
まったく家に立ち寄らない父のおかげで貧乏生活を強いられている春日井絢乃、そしてロボ娘ベッキー。だが春日井教会の牧師である絢乃にはもう一つの顔があった。それは悪魔を退ける“エクソシスト”。日々の生活費を稼ぐため、絢乃は相棒ベッキーとともに、西へ東へ退魔業に大奔走!人気シリーズ「超鋼女セーラ」から、外伝が初のリリース。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は一話完結の短編連作の形で本編「超鋼女セーラ」の3年前の出来事が綴られていく、春日井絢乃と超鋼聖女ベッキーのふたりが悪魔を相手にエクソシストをしたりそれ以外にも活躍したりした様子を書き出していった作品、ですね。
基本的には軽いノリです。本編とは違いセーラと茸味は出会っていない…どころか、そもそもセーラの出番はまぁそれなりにあれども茸味はまったく出番無しということで、2人がかもし出すラブラブ空間的なものはまったく無く、綾乃とベッキーによるお気楽な軽いノリが始終を締めています。帯に「愉快♪痛快☆退魔録!!」と書かれており、文字通り勢いとノリの良さで突き進んでいくような、壁に悩むとか苦悩する様子がうんぬんというような、ネガティブな要素はまったくありませんでした。つまり、頭を空っぽにして読むのが一番楽しめる作品かな、と思います。
構成は全部で5節。それぞれ一節に一人、綾乃たちが相手をするべき人物が出てくるという形で、各節ごとの多彩な相手に多様に苦労する綾乃やベッキーの様子が見られますね。まぁベッキーはあまり苦労している、という印象はありませんでしたが。
第一節では明確に『悪魔』という存在が登場。悪魔レプラコーンを相手にして綾乃とベッキーの作品初の悪魔退治―――エクソシストの様子が書かれています。でも偉く軽いノリで、悪魔も威厳とか怖さ、とかいう属性をどこかに置いてきてしまったような情けなさでしたが。
第二節ではニーソックスに拘る変態とそれにより被害を被った13歳ボディ当時のセーラとラヴィニア、というのが全てでしょうか。この話では綾乃の影がラストは若干薄くなっているのと、ベッキーがその腹黒さを垣間見せていたのが印象的でしたね。
第三節ではある意味で綾乃とベッキーが初敗北の話。「悪魔超人同盟」を名乗る一団(しかし変態的)に、護送中だった悪魔を奪取される、というのが全体の話でしょうか。一応の黒幕は捕縛していますが、そのノリで見失いそうになりますがこれって完全に綾乃とベッキーが裏を斯かれた話、なのですよね。
第四節では電力料金の払い待ちの為、徴収を手伝う綾乃とベッキー。しかしその様相はやがて一転し、綾乃たち電力料金徴収組VSベッキーとオタク青年という、異例の味方同士対決となっていました。
第五節では基本に立ち返るように悪魔払いのお話。とはいえ今回も相手は変態的で、色々とぶっ飛んだ性格の人物が相手で読んでいるだけでも綾乃と一緒に眉を寄せて「なんでさ?」とツッコミを入れたくなるようなキャラクターでした。
総じてこのスピンアウト作品「超鋼聖女ベッキー」、文字通り超鋼女セーラの外伝作品として、何も考えずに超鋼女セーラの世界で起きるどたばたしたギャグ・アクションとして見れば気楽に読めて力を抜いて楽しめると思います。過去世界が舞台ということで、本編で成長した16歳ボディで登場するセーラたちが幼い目の13歳ボディで登場もするので、そういった登場人物の未成長の姿―――過去を垣間見る、という意味でも楽しめると思いますね。