超鋼女セーラ

超鋼女セーラ (HJ文庫)

超鋼女セーラ (HJ文庫)

超鋼女セーラ

著者・寺田とものり先生。挿絵・Ein先生。知る人ぞ知る懐かしいTRPG『番長学園!!』世界の世界観を引き継いでいる、『現実と似ているけど異なる現代世界』を舞台にして送られる物語ですね。
・登場人物
メインキャラは、ヒロインで文武両道に優れ生徒会長を務めるが、題名通りのロボット=超鋼女である来栖セーラ。主人公で機械も人も等しく愛せる稀有な資質を持つ、人間の瀬戸茸味(せと たけみ)。茸味に暴漢に絡まれているところを助けられて以来、茸味の事を意識している茸味のクラスメートの御浜千美絵。セーラと同じ超鋼女で、別の学校に通うセーラの姉妹機、泉秋院ラヴィニア。貧乏教会の一人娘、千美絵の親友の春日井絢乃。春日井家=教会に居候しているセーラ、ラヴィニアと同じ超鋼女の姉妹機のベッキー。セーラたち同様の超鋼女だが何故かセーラに襲い掛かったりするサァラ、など。
サブキャラクターには茸味の母親、瀬戸徳子。クラスメートの馬頭修、鹿山健介などが登場します。
・シナリオ
彼女の名前は「来栖セーラ」、彼の名前は「瀬戸茸味」。ひょんなことから恋に落ちた、年上のお姉様(高3)と年下の男の子(高1)。ふたりは普通に恋をして、初々しい恋愛を始めます。でも、彼女には普通の女の子とは違うところがありました。それは、透明な刀を振り回すとか、腕のリングが高速回転するとか、そんなことではなくて…。そう、彼女は近接格闘戦用ロボット“超鋼女”だったのです!恋するロボ娘の学園ラブコメディ、開演。(7&YHPより抜粋。)
・感想
復刻/新装改定された、懐かしきTRPGシステム『番長学園!!』の世界観を共有する、IF世界の現代物語。人型ロボットやアンドロイドまがいのものが人権を確立して社会に溶け込み、『番長能力』と呼ばれる特殊能力者が存在している世界を舞台に進められるラブ・コメディ・バトルもの、でしょうか。
大元の世界観である『番長学園!!』が、熱血と友情で勝利、ピンチの後に一発逆転、ヒロインの涙でパワーアップ、などの非常にわかりやすいコンセプトでプレイする/遊ぶための作品だっただけあって、その世界観を共有しているこの作品も非常に分かり易く、熱い展開の見える作品でしたね。しかし『番長学園!!』の世界観を共有しているだけで、あまり『番長学園!!』そのものを思わせる雰囲気はありません。番長能力者はあくまでおまけであり、固有名詞を持つかつての作品で登場した番長能力者や他作品でのキャラは今のところ出てきません。あくまでメインはセーラやラヴィニアといった超鋼女―――番長能力の副産物的に生まれた存在、としてスポットは終始セーラや茸味に当てられ続けています。
この巻では主人公・茸味とヒロイン・セーラとの出会いから始まって、交際がスタートし、交際許可の条件としてセーラの養父から出されたスティール・アーツ―――ロボットと人間がコンビを組んで出場する武道大会のようなもの―――への出場のため、予選に挑むまでが書かれています。
作品としては、いわゆる高校入学を機に突然の告白を受けた主人公が慌てふためきながらも周囲になじんでいき、また、告白してきた相手との仲を深めていくという学生生活が中心として書かれる、少年と少女の恋物語を書くジュブナイル小説的な作りです。ただ、単なる恋物語小説でないのは、セーラ―――ヒロインがロボット娘であり、また彼女を狙う者がいてバトル要素もある、ということでしょう。そんなセーラのロボットとは思えない感情表現の豊かさ、またロボット相手だと理解していながらセーラを人間の女性を扱うのと何ら変わらず接する茸味という人間の器の広さ、それらに触れて楽しむというのがこの作品の楽しみ方かと思いますね。
ロボットと人間の恋、という難しい題に挑むこの作品。果たしてその結末はどうなるのか、気になりますねー。
そして個人的な事ながら、世界が繋がっているのなら願わくばおまけキャラ、或いはお遊びキャラとして一行でもいいからごんちゃんとか氷刃、雪姫、聖蓮とかが出ないかなぁ…と夢想してしまいますよ。