神曲奏界ポリフォニカ 黒5

神曲奏界ポリフォニカ レゾリューション・ブラック

著者・大迫純一先生。挿絵・BUNBUN先生。シェアード・ワールド神曲奏界ポリフォニカ』の『ブラック』と呼ばれるシリーズ作品です。大迫先生は他著作にHJ文庫から『鉄人サザン』シリーズなど出されていますね。
・登場人物
精霊警官で警部補の巨漢の大男、マティアの契約精霊である通称マナガことマナガリアスティノークル・ラグ・エデュライケリアス。マナガと契約している楽士警官でありマチヤ・マティア。精霊探偵、金色の獅子の鬣の髪を持つレオンガーラ・ジェス・ボルヴォーダン。なにかとマナガとマティアの手伝いをする警官、クスノメ・マニエティカ。マティアを可愛がる精霊のリジェーナ・リン・ニヴァーホルト。
今巻では事件に関わる人物たちとして、サムラ・アレクシア巡査部長。モリタ・ガディアメイン博物館警備員。探偵としてのレオンへの依頼人、ニシナ・キュリエ。公式な記録を持たないニシナの契約精霊、フォルクシース・シェナ・ダクルノーワ。博物館館長スルギ・ウィーハン。クワナ・リグファイル博物館警備員。などが登場します。
・シナリオ
「何度も何度も言うけどね、どデカい坊や、その子は人間なんだよ。しかも、まだ一七の女の子だ」集中治療室でカリナの言葉を反芻するマナガ。その前には酸素マスクをし、点滴の管をつけたまま静かに眠るマティアの姿があった…。万全の警備体制を誇るトルバス都立神曲博物館から忽然と姿を消した伝説の単身楽団「氷の女王」。射殺された警備員とカメラに写らない犯人の謎。マティア抜きで捜査を続けるマナガだったが、レオンの依頼人が「氷の女王」と関係が深い人物と判り、事態は思わぬ方向に急変する…!マナガとマティア、二人を襲う最大の危機!黒のポリフォニカ第5弾登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は博物館で起きた警備員殺害及び博物品盗難事件を、マナガとマティアが追いかけていく話です。殺害された警備員、失われた展示品。それだけなら単なる強盗殺人。しかし、偶然立ち寄った博物館で事件が起きた事を知ったマナガとマティアが事情を聞いている時に、精霊が現れて言う。「僕がやりました」と。だがマナガとマティアはそれが嘘であると感じていた。果たして真相は―――?何故、犯人だと名乗る精霊はそんな事をするのか?博物館の監視カメラには犯人の姿は写っていない。果たして犯人はどうやってカメラに写らなかったのか。本当に精霊が犯人か―――!?と、いった感じですね。
この巻ではマナガとマティアがコンビを組んで事件にあたるという基本スタイルに、少しの影がかかるのが印象的でしたね。というのも、マティアが風邪で倒れてしまい、マナガがマティアを気遣って一人で捜査する事になるのです。それでも床の上から人づてに話を聞いて思考を走らせたりでマティアも捜査そのものには関わりますが、それでも基本はマナガが一人で動いている形で、犯人を問い詰める時もマナガの横に立っているのはサムラ巡査部長だったりしてマナガの横にマティアがいないという普段とは違い途中までしっくりこない雰囲気を感じますね。
しかしそれだけに、マナガの危機にレオンがマティアを連れて駆けつけた時、哀愁のブルース・ハープが鳴り響いて2人が元の姿―――マナガの横にマティアが、マティアの横にマナガがいる姿になった時には抜けていたパズルのピースがはまったような充足感、達成感を感じ、やはりこの作品は2人が揃っていないと駄目なんだな、と痛感しましたね。
そして今巻で使われていた犯罪のトリックは、誰でもできる方法であるだけに精霊という存在がいる、という縛りに関わることなく推理できる楽しみがありましたね。「精霊でも人間でも可能な犯行。さて犯人は誰?」という感じになっていて、マナガとマティアの推理が「人間にはできない。だが精霊にはできる」といった論法に縛られる事無く、論理的な推理と裏付けで解き明かされていく真っ当な推理小説となっていてその面でも楽しめましたね。