EX!4

EX!  4 (GA文庫)

EX! 4 (GA文庫)

EX!4

著者・織田兄弟先生。挿絵・うき先生。変身ヒーロー者の逆転立場小説、といった所ですか。敵として扱われる『怪人』たちの養成校で、新米変身ヒーローが様々な経験を積みながら、圧政を敷くばかりになりつつある他の『ヒーロー』たちを相手に戦ったり、養成校所属の女性怪人たちと仲良くなったりする作品ですね。
・登場人物
主人公で彼が所属する怪人養成所では敵方となる変身ヒーロー『エクスター』を父に、怪人養成所の前身であった悪の組織で大幹部だった母を持つサラブレッドな血統を持つ大和一哉。蜘蛛型の女怪人で一哉と最初に仲良くなった諜報・偵察に長けた能力を持つ多奈内由良。学園の三巨頭<ポイズン・スリー>の1人で百足型の女怪人、千路美尋。そんな美尋が心を砕く友人で彼女の主人でもある<ポイズン・スリー>の1人で蠍型の女怪人の周防比夜。<ポイズン・スリー>の一角で一哉の戦闘訓練の面倒を見ている師匠の様な立ち位置にいる蜂型の女怪人の峰音十季子。第2巻から登場した蝙蝠型の女怪人で古強者でもあるが見かけは幼い古森羽月。謎の能力を持つがそれを隠し、学園では最下層の立場で何か色々企んでいる様子の涼原太一。最初は威張り散らしていたが今では一哉の腰ぎんちゃく兼友人の様な立場になっているドラゴンタイプの怪人、八神龍司。ガゼルの怪人の素質を持つがまだ変身できない和恵理子。ざっとこんなところですかね。
今巻では、新キャラクターで一哉の幼馴染の相摩量子。学園を監視するエクスター、朝倉零が登場します。
・シナリオ
「いっくん、ウチのこと覚えてる!?」大和一哉は、突然クラスにやってきた少女に抱きつかれて驚いた。彼女こそ、一哉の小学生時代の幼なじみ・相摩量子だったのだ!思わぬ再会をきっかけに、体験入学だという彼女を案内する役目を、日向真純から多奈内由良とともに押しつけられた一哉。だが、行く先々で和恵理子をはじめとした学園内の実力者たちに勝負を挑み、しかもそれに勝利し続ける量子に、徐々に他の生徒たちの注目も集まり始めるのだった。一方、半日分の記憶がなぜか空白となっている由良は、それを境になんだか少し調子がおかしいようで…!?待望のシリーズ第四弾登場。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻は第2〜3巻が『HERA』の残党、或いは『悪の怪人勢力』との戦いなどを書いた出来事と考えれば、今巻は第1巻の状況が近い展開ですね。所謂、『正義の戦士』たちを相手にした話、ということです。
一哉の幼馴染の少女の突然の転入から始まって、彼女が学園の名立たる実力者達と対決して次々勝利を収めていく―――その様子から、既に何かしら裏があることを感じさせられる展開で導入されていきます。そして龍司の兄である八神竜臥の登場や、第1巻で登場したエクスターストームとはまた別のエクスターによる学園の監視行為と、色々と暗躍する影の多い巻でもありましたね。
バトルシーンは元が『改造人間と正義のヒーロー』を基本スタイルにしているだけに、派手でかつ格好良い展開が多いです。敵味方を問わず必殺技や特殊技を使い合い、ただの殴り合いじゃない、能力バトルを加味しながら肉弾戦、といった形で爽快感の中に泥臭さを混じらせている、といった印象です。
そしてこの巻では、2人の主人公がいる、といった感じを覚えます。1人は基本でありこれまで通り一番注目を集める主人公である大和一哉。そしてもう1人は、第1巻から登場しながらも中々日の目を見る機会の少なかった由良の親友、和恵理子です。恵理子が自分の壁を越えようとして、量子を目標に挑み続ける不屈の闘争心と諦めないスタイル。それらが結実し、『変身』を可能とするまでのプロセスがこの巻でのもう1つの見所、もう1人の主人公の活躍だったと思います。
毎巻、起きた出来事が最終的にはハッピーエンド/トゥルーエンドになるこのシリーズ。今巻も最後には全てが丸く収まり、明るい形で集束しますのでその辺りも安心して読めますね。とはいえ何もかもが問題無し、という訳ではなく、今後に関する布石や伏線は散らされていますので先に関しての積み重ねもあり、それらがどう使われるのかも個人的に楽しみです。