SW・RPGリプレイ集xS3

ソード・ワールドRPGリプレイ集xS3 猫の手お気楽娘、幻惑?

著者・清松みゆき先生。挿絵は牛木義隆先生とマップイラストで小林裕也先生です。牛木義隆先生は、HJ文庫で「くじびき勇者さま」シリーズの挿絵など描かれていますね。
・登場人物
少しだけ魔法も使えるファイターのウィンドをリーダーに、ハーフエルフでソーサラーで幸運神のプリーストというなんとも形容し難い特徴を併せ持つユーリリア、家出娘でレンジャー&シーフの突撃娘モニカ、そんなモニカに連れられるままに冒険者になったシャーマンのトリム、「ふぃぎゅあ」製作に燃える知識神プリーストだがシーフも若干こなし、固いので前衛もできるというオールラウンダーなズン。この5人が繰り広げるドタバタ珍道中。今巻では前巻で戦線離脱していたウィンド復帰や代わって入っていたジョージの離脱など、人の出入りがまたある巻でしたね。
・シナリオ
魔法王国ラムリアースの首都ライナスに、五人と一匹やって来た!秘密結社“ゼム”に囚われた、朋友ウィンド助けるために、五人と一匹やって来た。手がかり求めてあちこち探れば、お気楽娘が盗賊ギルドに足かせつけられる始末。“ゼム”の秘密実験場を探り当てて乗り込むと、仮面の魔法戦士がお出迎え。魔法戦士ハイロードが繰り出す秘剣には、どこかで見かけた剣筋が?猫の街を旅立った、お猫さまと猫の手冒険隊。気がつきゃ、周りは敵だらけ―。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この巻での展開は、戦線離脱して敵陣営で『ハイロード』と呼ばれるようになったウィンドを相手に戦う展開と、復帰したウィンドがしかし呪いにかかっていてそれを解く為にダンジョンに挑んだり、シティ・アドベンチャーでいなくなった捕虜を探して町を駆けずり回ったりと、分割して考えるなら「かつての味方を相手に戦う話」と「正統派ダンジョン・クエストの話」と「シティ・アドベンチャー中心の話」の3つですね。それぞれが「愛しの君・出現」「主人公(仮)・帰還」「あの娘探して」とサブタイトルが付いています。
「愛しの君・出現」では、敵として登場したウィンドを相手に彼の性格を反映したGMが行動させている時に、ウィンドの特技『HP1点残し』が出たのが凄いです。当初は仮面をつけて登場したウィンドをその行動でPCたちが正体を見破るなど、『敵に回った味方』を相手にしているロールプレイが納得できつつも笑えて面白かったですね。
「主人公(仮)・帰還」では、正統派なダンジョン・シナリオが楽しめました。地の底のピラミッド状の遺跡から呪いを解くのに必要な魔晶石を取ってくる―――そんな典型的な、「ダンジョンの奥のお宝を取ってくる」シナリオでした。知恵を使う仕掛けや呪い攻撃を仕掛けてくるモンスターなど、ここぞとばかりに色々な仕掛けが施されていて『冒険』をしている感じが一番強かったですね。
「あの娘探して」では、典型的なシティ・アドベンチャーとして街を舞台にして相手の動きを読んだりして、失踪したポロン嬢を探すという、これまた典型的な人探し系シティ・アドベンチャーが楽しめるようになっていました。そこでは立場が弱くなったウィンドがユーリリアやズンたちにからかわれていたりしていて、その面でも笑って読める話でしたね。
総じて今巻では彼ら「猫の手冒険隊」の敵役として確立された「やつら」こと秘密結社ゼム。この相手との因縁が深くなる話が多かったのではないでしょうか。元より因縁のあったウィンドを通じて、パーティーメンバー全員がゼムと敵対の立場にあり、今巻ではウィンドを取り戻したゼムからまた猫の手冒険隊がウィンドを取り返すという形でさらに因縁が深くなったように見えます。しかし再度パーティーメンバーとなったウィンドながら、ハイロード・ポイントという謎の数値があったりしてこれが最終的にウィンドたちにどう関わってくるのかなど夢想できたりで、次巻以降での展開が楽しみですねー。