生徒会の一存

生徒会の一存

著者・葵せきな先生。挿絵・狗神煌先生。短編連作形式の、とある学園の生徒会である男1人と女4人の一団が毎回何かしらのテーマでもって話をしたりしている様子を書いた作品ですね。著者先生の葵せきな先生は、他の著作に「マテリアルゴースト」シリーズなどがありますね。
・登場人物
生徒会で2人いる副会長の片方で、「生徒会を俺のハーレムにする!」と公言して憚らないお馬鹿でエロスな男。でも何故か憎め無いキャラで、周りには慕われている主人公の杉崎鍵。生徒会長で3年。ちびっ子で思い立ったままに行動するタイプだがカリスマはある美少女の桜野くりむ。長身・モデル体系・優しくクール…だが、ドSな書記の美少女、紅葉知弦。2人いる副会長の片方、ボーイッシュで健康的美少女だが百合気味で、同級生の鍵には遠慮は無いが愛も無いデレないツンデレこと椎名深夏。深夏の妹で儚げ&男性恐怖症と守ってあげたくなるタイプだが特殊な趣味がある会計の椎名真冬
以上の4人によって話は構成されていきます。
・シナリオ
私立碧陽学園生徒会室―そこは、選ばれし者だけが入室を許される聖域にして楽園。
生徒会メンバー中、唯一の男性である副会長・杉崎鍵は、今日も生徒会室の中心で愛を叫ぶ。「俺は美少女ハーレムを作る!」と(ただし、扱いは空気以下)。
そして、お子サマ生徒会長・桜野くりむは、今日も生徒会室の中心で身勝手を叫ぶ。
「ただの人間には興味あ(自主規制)」
日々くり広げられる、ゆるすぎる会話。日々費やされる、青すぎる青春。いざ行かん少年少女よ、妄想という名の大海原を!
これは、ユカイツーカイついでにちょっぴり秘密アリな碧陽学園生徒会メンバーたちの、愛すべき日常をつづった記録の一端である。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は絶望的にパロディやらオマージュやらが多いですね。っていうか、ここまでやっていいのか!?と思わず作者先生の今後を心配してしまうくらいネタが多かったです。10年後に読んだら当時の流行や話題作を思い出して苦笑いをしてしまいそうな…思い出して書くだけでも「ガンダム」「ハンター×ハンター」「コードギアス」「ひぐらしのなく頃に」「涼宮ハルヒの憂鬱」、などなど。一瞬見ていたけど覚えていないだけの作品、私がネタ的にわかっていない作品なども含めればもっとあるんじゃないでしょうか。それくらい大量に危うい作品です。
話の展開はくりむが毎回何かしら思い立ち会話が始まり、それに対して周りの生徒会役員たちがリアクションを返す―――そういった流れで進められていきます。
前述したように、パロディやらオマージュやらが多いので、自然と話は会話のキャッチボールによるハイテンション&ハイテンポで進められていきます。ですので、そのノリについていけるかどうかがこの作品を面白いと思えるかどうかの分かれ道になるのではないでしょうか。
しかし、この作品はただの悪乗り的馬鹿騒ぎだけではなく、意外と裏でしっかり動いている主人公がいたり馬鹿な事をやっている主人公にも過去があってその過去に対して他の生徒会メンバーが思うところあったりで、バカ9に対してシリアス1の割合で構成されている感じです。このシリアス1の配合が見事で、各キャラクターの魅力を出すのに一役買っていますね。そこに至るまでがとんでもないお約束な展開だったりするのですが、そのシリアスを混ぜたお約束の魅せ方が上手い、といえば良いのでしょうか。
総じると、この作品はあまり人前では読めない作品ではあります。ネタがわかってしまうとニヤニヤしてしまう事請け合いでしょう。短編連作と言う事ですので、空いた時間の合間にちょっと読む―――そういった読み方も良し、時間を取って纏めて一息に読めば最初から最後までニヤニヤ笑いが止まらない―――そんな楽しみ方も良し、といったところで。どちらにせよ、ギャグ小説として『今読むなら』楽しめる作品でしょうね。時事ネタは時が過ぎるごとに風化してしまいますので…。