シャムロック6

シャムロック6 〜裏切りは蜜の甘さ ですぅ〜〜

著者・沢上水也先生。挿絵・西脇ゆぅり先生による、GA文庫創刊時に刊行された作品の1つです。沢上先生は他作品として徳間デュアル文庫から「舞−乙HiME列伝」などの作品を出されていますね。挿絵の西脇先生はPCゲームの「きると」が代表作です。
・登場人物
美少年だが常識知らずのマッドサイエンティスト久我原桂一。そんな桂一に心酔してついて行く、天然の性格をした元茶道部部長現世界征服研究会未来警察同好会有限会社シャムロック・カウンシル社長という肩書きが色々と変わる通称”白メイド”の漣恋歌。十六夜学院生徒会の生徒会長の正義を追求する少し単純な突撃少女、通称”赤メイド”中瀬古舞。同生徒会副会長の舞に心酔し彼女をサポートする事に全力を傾ける長刀術などの武芸を修めたお嬢様の通称”青メイド”こと藤堂乱菊。コスプレオタク美少女の通称”黒メイド”東雲クリス。第1巻の事件に巻き込まれた結果、シャムロックに協力する立場になった図書館司書の氷取沢香澄。第2巻から登場の洗脳説得メガホンという道具を使い相手の精神に訴えかける話術を得意とするシャムロックの対外交渉人(ネゴシエーター)の、”偽シスター”こと簗瀬理佳。そしてその弟で熱血ヒーローやロボット好きが高じてシャムロックに入った”下っ端”こと簗瀬浩樹。そして敵か味方か。巨大企業ハリントンの戦略研究室”ヘッドクウォーター”の謎の女、その正体はAIというロウヒ。
サブキャラクターにはこの巻では敵組織であるクレプスキュール教団から亡命を希望して密航してくるレイチェル・杉浦。日本政府の政治家で第1部でも登場していた総理大臣公設秘書の黒木などが登場しますね。
・シナリオ
調伏か、もしくは死か。殲滅せよ、シャムロック・カウンシルを!
アメリカ西部に総本山を置くクレプスキュール教団が、本格的なアジアへの布教活動の足がかりとして選んだ日本。まず排除すべきは久我原桂一率いるシャムロック・カウンシル! 教団を率いるのは、世界でもたった四人しかいないプリエステスの一人、末っ子のヤンガープリエステス。
かつてない強敵の出現に揺れるシャムロックカウンシルの面々。さらわれた氷取沢香澄を救出するため、クレプスキュール教団の船上パーティに乗り込んだまではよかったが……。
シャムロックシリーズ第六弾、衝撃の第二部ついにスタート! (裏表紙より抜粋。)
・感想
この巻から新章スタート、第二部開始ということです。
今巻の敵は『クレプスキュール教団』という新興宗教。これまでの巻でシャムロックに敗北し、一線を退いた形になったハリントン・ジャパン・ポリス・サーヴィスに変わる新しい組織だった敵、ということですね。絡め手から直接的な手段まで多岐に渡りシャムロックを敵視して狙ってくるクレプスキュール。そのクレプスキュールの一角―――プリエステスと呼ばれる教主の娘4姉妹の、その末っ子である4女のヤンガー・プリエステスが率いる一団を相手に、シャムロックが立ち回る―――そんな展開です。
この巻はシリーズ初の上下巻構成です。この巻は上巻に当たり、香澄の失踪、クレプスキュール教団の台頭、桂一が行方不明、舞と乱菊がシャムロックと敵対状態になる、レイチェル・杉浦という教団からの亡命者を護衛する事になる、教団の日本支部幹部に驚きの人物が就任するなど、様々な出来事が起きます。ですがやはり注目するのはシャムロック関係の2点、舞と乱菊のシャムロック敵対と、桂一の行方不明、というところでしょうね。
シャムロック以外の立場の関係からシャムロックと戦う立場になる舞と乱菊。対するは桂一を抜いたシャムロック―――恋歌とクリス。白メイド&黒メイド VS 赤メイド&青メイド。その姿は巻頭のカラーイラストにもなっていてそれだけ注目点、ということでしょう。そしてもう1点の、桂一の行方不明。香澄の失踪を追いかけて洋上の豪華客船に乗り込む桂一と乱菊。香澄を探して別行動を取った2人。その結果香澄を救い出すも、桂一が消息不明という事態。果たしてあの天才が易々とやられるものなのか…?と、シャムロック・メンバーに思わせながらも姿を見せない桂一。その展開は桂一の意図を読めない状態では五里霧中の如く、先の展開が読めませんね。
各自が各々の考えで動く。恋歌とクリスはシャムロックとして、舞と乱菊は生徒会として、理佳と浩樹はシャムロックとしても一般生徒としても。そんなバラバラなメンバーを見ていると、何と言われようと桂一がやはりシャムロックの中心、皆を引き寄せ纏めていたのは桂一だったのだな、と再認識しますね。
そしてクレプスキュール教団からの亡命者、レイチェル・杉浦を守るシャムロックと、学院理事会の命によってその代理執行者として、シャムロックと敵対する形で引き渡し要求をすることになる舞と乱菊の生徒会側。一触即発の状態で驚愕のクレプスキュール教団日本支部長が就任の挨拶に現れる―――。というところで続く、と。色々裏で糸を引く影が見えながらも、シャムロックの内部抗争の様相を見せたまま作品としては次回に続いていて展開に目が離せませんでしたね。
今巻、作品前半ではいつも通りのシャムロック・カウンシルが見られてその団結を見せていて、後半で要たる桂一の不在によって各自がバラバラになっていくのが印象的でした。恋歌はシャムロック社長の立場として頑張りますが絶対決定権を持つ桂一の承認無しで周囲はどこか不安気でしたし、舞と乱菊は桂一の不在に動揺し不安定な心のまま生徒会としてシャムロックと敵対と、桂一の離脱を契機に一気にバラバラになっていった印象でしたので。その辺り、上巻の役割がシャムロックが危機に陥るという形だとしたら、立派に役目を果たしていたと思いますね。