アリアンロッド・リプレイ・ルージュ4

アリアンロッド・リプレイ・ルージュ4 ノエルと蒼穹の未来

著者はナイトウィザードシリーズなどでお馴染みの菊地たけし先生とF.E.A.R.。挿絵は佐々木あかね先生をメインに、安達洋介先生、林啓太先生らといったところで。
・登場人物
主人公としてメインを張るPC1にウォーリア/ダンサーの正統派天然ヒロインとなっているノエル=グリーンフィールド/力丸乃りこ、アコライト/ウォーリアの戦う神官戦士にクリス=ファーディナント/かわたな、第2巻でクラスチェンジしているけどいまだに武器は銃器のシーフ/レンジャーなクラスだけどガンマンなエイプリル=スプリングス/たのあきら、前回リタイアしたトラン=セプターだった今回から新キャラクターで再参加のメイジ/サモナーのレント=セプター/クレバー矢野。以上4名がPCです。
敵役としては以前の巻にも登場していた、ノエルの母に仕えるという騎士ガーベラ。
NPCとして占いお婆さんなど、でしょうか。
・シナリオ
大切な仲間の死。その悲しみを胸にノエルたちの旅は続く。だが、神殿を離反したクリスは濡れ衣を着せられ、一行は全世界から追われる立場となっていた。数々の危機がフォア・ローゼスを襲う。そんな時、彼らを救ったのは、氷の魔法を操る謎の少年だった。さらには予期せぬ人物の助けも借りて、ノエルは母ノイエのいる北の最果ての地へとたどり着く。そこで一行を待っていたのは……。今、全ての真実は明かされ、ノエルの旅の終わりが、やって来る―――。鬼才・菊地たけし渾身のリプレイ、ついにクライマックス! 大爆笑と大感動がキミを待つ!(裏表紙より抜粋。)
・感想
TRPGシステム『アリアンロッド』を使ったリプレイの『ルージュ』と呼ばれるシリーズの最終巻です。最終巻だけにこの巻、きくたけ節全開でしたね。きくたけ節…つまり、『世界の危機』です。
巨大すぎるほど巨大で、特殊な能力バリバリですがそれをこれまでに用意されていた或いは与えられていた道具或いは設定或いは人脈で解除し、従来の…普通のアリアンロッドのシステムで戦う―――その状態への持っていき方が見事でしたね。これまでの伏線とか、設定とか全動員して最終決戦―――盛り上がる事この上無し、です。
最終決戦でのボスの能力の非常識なまでの強力さはラスボスとして用意してあるだけあって凶悪でした。ノエルたちは最初から最後まで一歩間違えれば敗北という、紙一重の戦いを繰り広げていました。そこに、このセッションに参加していた人たちが一丸となって攻略に向かっていた姿が見え、TRPGの醍醐味である『参加者同士の協力/協調』が重要事項として如実に取り上げられていて、良かったです。全員が知恵を使い考えなければ攻略できないボス…それを、あからさまでないギリギリのレベルで攻略方法を示しているきくたけ先生も、さすが歴戦のGM、といった感じでしょう。新メンバー・レントがすんなり仲間になっているのもそういった『参加者同士の協力/協調』が自然と身に付いていたからだろうな、とも思えますね。
また、旧作となる『銀の輪の封印』シリーズからフェルシアが登場していたのもシリーズ通して読んでいる人へのサービス的な意味で面白かったですね。GM視点と言うか、敵になるとこんな感じかー、と。
それまでの過程―――ラスボスの前に行くまで、というのも世界の危機に際してなりふり構ってられずに色々と後の事を考えずに突撃していくような印象でしたが、その場その場のアドリブや、仕込まれていたネタ―――前巻以前で張り巡らされていた伏線から引っ張り出される笑いのネタに、ただラスボスの元へ行く、というだけの行為がとても笑えるものになっていてその辺りも、他のGMでは見られない過剰なまでの用意周到さが、楽しめましたねー。まさかノエルの父があの人だったとは…以外でした。
最終巻ということでギャグ分はやはり初期の方の巻と比べると若干落ちています(最大だった2巻のギャグ分の半分も無いかもしれません)。が、その分この巻は前の第3巻に比べても遜色の無いシリアスムード&バトルでの緊張感が他のリプレイシリーズなどよりも桁外れに高いです。たった一つの選択肢ミスでゲームオーバー/バッドエンディング…そんな激難易度のようなリプレイ模様が、この作品では楽しめました。
ノエルが主人公である『ルージュ』シリーズはこれで終わりですが、天然のキャラクターで大層笑わせてくれた力丸乃りこ女史には、是非ともまた新シリーズでも始まったときにはプレイヤーとして参加して欲しいと思いましたねー。