ゼロの使い魔13

ゼロの使い魔13 聖国の世界扉

著者・ヤマグチノボル先生。挿絵・兎塚エイジ先生によるアニメ化もした人気シリーズの第13作目ですね。
・登場人物
主人公で現代世界から異世界ハルケギニアに使い魔として召喚された平賀才人とを筆頭に、ヒロインで使い魔としてのサイトの主人に当たる貴族の令嬢ルイズ。サイトを慕うメイドの平民シエスタ。ハーフエルフでサイトたちに誘われひっそり隠れ住んでいた村から出てきてトリステイン魔法学院に入学したティファニア。サブキャラクターはサイトの悪友とも親友とも言える貴族だけどキザでバカなギーシュ、ギーシュやルイズの同級生マリコルヌ。タバサ、キュルケ、モンモランシーといったルイズの友人など。それからこの巻では重要な役割を果たすアンリエッタ女王陛下、教皇ヴィットーリオ・セレヴァレ、ジュリオ・チェザーレなどですかね。
・シナリオ
才人が元の世界へと帰るための方法を探してあげたい。でも、才人に帰ってほしくない。二つの気持ちに戸惑うルイズ。一方、里心がついた才人だったが、ハルケギニアで仲良くなった人たちを見て、心が揺らいでいく。「こっちの世界にいてもいいんじゃないか」と思い始める才人。そんな折、女王アンリエッタより、ロマリアへと来てほしいと連絡がくる。“虚無の担い手”であるルイズとティファニアへ告げるべきことがあるという。それは、“虚無”に関する重要な秘密だというが―。アンリエッタの、ロマリアの意図は何か? ガリア王ジョゼフの思惑は―?大人気の異世界使い魔ファンタジー、急展開の第13弾!
・感想
この巻は兎に角進展が多い巻でしたね。前の巻が短編集で重要な物語的動向が無かった事に反するように、この巻では様々な変化/進展が次々に起きていました。第3の虚無の担い手の本編への関与からアンリエッタ女王の『聖地奪還』への意識的な変化。ジュリオがサイトたちへはっきりと自分が『ヴィンダールヴ』であることの明言から、聖地からもたらされたという大量の『サイトの世界の武器』の登場、サイトが元の世界に戻る方法がわかる事や、ルイズの一大決心にジョゼフ王の愛妾を手にかけてまでの暴走の始まりと、これまで2、3巻分くらい使ってしていた進展がこの1巻で怒涛のように起きていました。
しかしてこの巻で重要なのは、やはりサイトが元の世界に戻る方法がわかった事とルイズの一大決心でしょうか。ルイズの1つの決意をさせるその方法の判明は、今後の物語に大きく関与しそうですしね。
サイトが元の世界に戻る方法に関係して、第1巻以降まったく出番の無かった、最初にサイトが持ってきていたノートパソコンが重要かつ情動的な演出道具として使われていたり、ガンダールヴの武器として大量に登場した『サイトの世界の武器』の登場など、中〜後半はサイト関係の重要な話が詰まっていました。
そして前半と、最後の最後に書かれるサイトとルイズのラブ話。しかし最初と最後ではまったく意味が違い、ふたりの心情とか周りの状況を鑑みるに、前半部分はこれまで通りの、素直になりきれないルイズといざと言うところで抜けているサイトという2人の微妙な擦れ違いがありながらも仲良くしていた2人に対し、後半の恋の話はまったく趣の違う、ルイズの最後の思いでつくりといった感じで前とギャップのある、楽しそうにしていながらも物悲しい恋の話になっていました。
そういった形で、怒涛の展開ながら中心にあるのはサイトとルイズの話、というのが今巻の流れですね。
ルイズの一大決心―――前にもあったルイズがサイトを元の世界へと戻す決心ですが、この巻ではそれが具体的な方法が現実的な手段として示されただけに、その決意に至る出来事やルイズの心の震えなどがより如実に書かれている印象でしたね。