きみと歩くひだまりを

きみと歩くひだまりを

著者・志村一矢先生。挿絵・桐島サトシ先生による現代風ファンタジー冒険物ですね。志村先生は他の著作に『月と貴女に花束を』シリーズや『麒麟は一途に恋をする』シリーズなどがあります。
・登場人物
主人公で妖獣と戦う獣殺士を目指す学生の剣士、杉崎星也。その星也の幼馴染で相棒の魔法使い、神代ひなた。星也やひなたと同じ学園の生徒で魔法使いだが、目的の為に苛烈に戦い続け相棒の剣士を何度も失っている為『死神』『相棒殺し』と呼ばれる安藤美月。サブキャラクターの星也たちの同期生の剣士、南あかね。南の相棒の魔法使い、愛原皐月。
敵役としては妖獣を操り人に害を為す妖獣騎士の朧。
そしてそんな妖獣騎士たちと戦う、獣殺士の上位職である『救済者』である強力な戦士の北斗。その上司の導師、マオ。こんなところでしょうか。
・シナリオ
人類の天敵“妖獣”が出現して約一世紀。地上の六割は妖獣の闊歩する死の大地“妖獣地帯”と化していた。妖獣と戦う“獣殺士”を育成する光風学園に通う杉崎星也は、幼なじみの神代ひなたと共に妖獣地帯で危機に陥っていたところを一人の美少女に救われる。少女の名は安藤美月。光風学園一の魔法使いである美月はしかし、“死神”“相棒殺し”と呼ばれ、周囲から恐れられていて…。ひなたと美月。ふたりの少女との別れと出会いが、少年と世界の運命を大きく変えていく。志村一矢待望の新シリーズ開幕。(7&YHPより抜粋。)
・感想
この作品は、とてもファンタジーというかコンピューターゲームっぽい物語でした。
二極化されているとは言え職業に『剣士』『魔法使い』があり、世界にマナがありそれを使って魔法を行使し、時に町を襲う妖獣を迎撃し、時に町の周囲に徘徊する妖獣と戦う…武器も小剣や長剣、あるいは槍などから魔法の杖まであり、材質も騎士鋼<アロンダイト>や精霊真銀<ミスリル>などがあり、空には空中都市が浮かび、と、とてもファンタジーです。かとおもいきや、車も普通にあったり家は二階建ての建築物としてコンクリートなどが使われていたりと、そんな、現代世界とドラゴンクエストとかウィザードリィが混じったような世界観でした。所謂、『現代世界に魔法が混じった世界』というIfの世界観の物語ですね。
ストーリーは、探索型兼遭遇敵殲滅型な世界を舞台に世界の命運を担う運命を背負ったり、挫折してそこから這い上がってみたり、仲間と協力して魔物の巣窟を潜り抜けたり、人間ながら妖獣側についたような奴を相手に立ち回る事になったりと、展開は早い印象を受けましたね。第1巻にしてはかなり厚めの本である事も手伝っているのでしょうが。主人公である星也が、一人前の獣殺士となるために様々な経験を積んで少しづつ成長していく少年の男としての成長譚の話であると同時に、ヒロインのひとりである安藤美月が、誰かと協調して戦う、などの行為を為せるようになっていく精神的な成長譚の話がこの作品の主な話かな、と思いました。
作品としてはIfの世界観をキッチリ作りこんでいて、面白いとは思いますが、少し説明的な部分が多くなっていたのは仕方が無いとは言え初見の印象において少しネックではないでしょうか。この一冊を読むにあたり、設定を理解し、話の流れを追いながら、登場人物たちにも焦点を当てて、かつ伏線ぽい物にも意識を向け―――と、良くも悪くも忙しく、やはり情報量の多さに少し混乱するところも。もう少しスッキリした読み易さも加わった作品になれば、とも思いますがその辺りは細かな所が理解できているという前提で綴られる次巻以降に期待、といったところでしょうかー。