レンタルマギカ10

レンタルマギカ―吸血鬼VS魔法使い! (角川スニーカー文庫)

レンタルマギカ―吸血鬼VS魔法使い! (角川スニーカー文庫)

レンタルマギカ10 〜吸血鬼VS魔法使い!

著者・三田誠先生、挿絵・pako先生による異種魔法格闘戦ノベル、ですかね。三田先生は他にスニーカー文庫「精獣戦争」シリーズなどを書かれていて、pako先生はPS2ゲーム「シャイニング・フォース イクサ」などの原画を描かれていますね。
・登場人物
主人公の魔眼持ちで社長の伊庭いつき。ヒロインに新入社員でケルト魔術使いの穂波・高瀬・アンブラー。サブキャラクターに陰陽道でオカルト雑誌や占い誌でライター業を営む猫屋敷蓮、8歳の小学生だが巫女でもある神道の葛城みかん。騒霊現象<ポルターガイスト>を起こせ加えて顕現現象<アポート>も使えるようになった文字通りアストラル幽霊社員の黒羽まなみ。先代アストラルメンバーで、両界曼荼羅を使う頼れる兄貴的な密教法師の隻蓮。以上が魔法使い派遣会社「アストラル」陣営という形で。
純正魔法使い集団「ゲーティア」陣営ではありますが、アストラル経営権の2割を持つ大株主という立場を持つとして、穂波同様ヒロイン格ということでソロモン王の魔術使いアディリシア・レン・メイザース
この巻から新メインキャラとして、アストラルに他魔術結社から出向してきたというルーン魔術使いのオルトウィーン・グラウツが登場します。口の悪いガキみたいですが、その実は友愛の心強くそしてその為に自分を犠牲にする事も厭わないという、冷たい外面に比するように義に厚い心情を持つキャラでしたね。それでいて特定の相手には弱いという弱点もあり、特徴的なキャラでした。
敵役に題通りのツィツィーリエという『吸血鬼』が出てきます。これは新キャラクターのオルトヴィーンと関係の深い敵役、というスタンスですね。
・シナリオ
2年生になったいつきの前にひとりの少年が現れる。彼はルーン魔術を使い、いつきを追い込んでいく。時を同じくして“アストラル”を襲うのは不死の生物と謳われる『吸血鬼』。これは偶然か、仕組まれた罠なのか!?周囲の命を吸い上げ、無敵になっていく吸血鬼に、いつきの拳は空を切る。残された死体と木々さえも、手先となっていつきを襲う。魔法使いたちは、禁忌の最高峰・吸血鬼に立ち向かえるのか!?大人気、異種魔法格闘戦。(裏表紙より抜粋。)
・感想
この巻から第2章開始、といった様相ですね。春が来て新学期が始まり、いつきたちが進級したりして世界観としても進行があった、という所からスタートしています。
他魔術結社から警告と監視も含めた新入社員としてやってくるオルトヴィーン。しかしアストラルに入ったからにはと会社の経営状態を見て建て直しに奔走し始め、協会の仕事をもぎ取ってくるなど有能振りを発揮し始める姿は、その場その場で出来る事はキッチリやるという、仕事人としての有能さ。これまでの会社としてのアストラルにはなかったものがようやくひとつ埋まった、といった感じでしたね。それが新章スタートとしてのアストラルの変化の象徴にもなってるな、とも感じました。
そしてそのオルトヴィーンに関係して来日した吸血鬼・ツィツィーリエ。その異常性と『吸血鬼』と呼ばれる力にアストラルの面々は、いつきの妖精眼をもってしても苦戦を強いられていました。それもまた新章としての始まりとしては典型的な、「負けからのスタート」として印象的でしたね。具体的には負けたわけではないのですが、全力出してようやく痛み分け、のようなラストでしたのでその意味で印象的、と。
魔法使いの世界の歪んだ師弟関係が大きく取りざたされて、それと対比するようにアストラルにおける対人関係を見せていて、この巻はそういった「魔法使い社会での上下関係」と、「アストラルの魔法世界での異質さ」というものも結構如実に書かれているというのも思いました。その際たる物がオルトヴィーンで、彼の態度、いつきの態度に対する感想、そういったものから魔法使いの社会の絶対上下関係の一端が見えていて、魔法使い社会の一面を覗ける話ともなっていましたね。