鏡の迷宮のグランギニョル

ナイトウィザードノベル 鏡の迷宮のグランギニョル

著者・藤原健市先生、監修・菊地たけし先生&F.E.A.R.挿絵・Nino先生によるTRPGナイトウィザードのオリジナルエピソードのノベルですね。著者先生は他作品に「ミスティックM.A.D」なる作品などを書かれているそうです。挿絵のNino先生は他作品に角川スニーカー文庫の「マキゾエホリック」の挿絵など描かれていますね。
・登場人物
下忍の忍者として絶滅社所属のウィザードとして侵魔相手に活動する斉堂一狼を主人公に、ヒロインに一狼が絶滅社から受けた護衛任務の護衛対象の姫宮空、汎用人型決戦箒試作機A型と銘打つ人型になれる自律箒のHTBX01A−アニス、そのアニスの産みの親―――造り主たる陰陽師の亜門天明、この4人をメインに、サブキャラクターとしてナイトウィザードでは有名は御二方、ナイトメア=ドリームマンと緋室灯がゲスト出演しています。
敵は鏡を操り虚像を実体化させて劣化コピーを生み出せる能力を持つ下級侵魔のニー=クラリスがメインの相手で。敵側にもゲストとして有名な蝿のあの人や金色のこの人が出てきますね。名前だけの登場だったりもしますが。
・シナリオ
紅い月。それは”奴ら”が現れる徴。”侵魔<エミュレイター>”と呼ばれるその闇の眷属により、世界は人知れず滅びの危機に晒されている。それに唯一対抗しうるのが、遠い昔に忘れ去られた力―――”魔法”を駆使して戦う”ウィザード”と呼ばれる者たちなのだ。その1人、斉堂一狼は、ある少女の護衛任務を命じられる。無邪気で明るい少女、空。だが、彼女は時折、奇妙な記憶の欠落を見せ…!? 『ナイトウィザード』世界を味わえるオリジナルストーリー、ここに登場!!
・感想
他のナイトウィザード作品と違い、この作品は確かに世界の危機的な話ですが規模がもう少し小さな世界の危機、という感じですね。
ロケットに乗って宇宙に行ったりする派手さもなければ、無限に続く夏でその原因を究明するミステリアスさも無い、遥かな未来に行って魔王と激闘も無ければ、古代から続く主人公とヒロインの因縁も無い。しかしそれら全てがほんの少しづつある…そんな感じです。派手にもなる、謎もある、戦いもある、ヒロインとのロマンスもある。しかしそれらは全て調和があって、どれが突出していると言う物でもない。
あくまで下忍の忍者ウィザードが一人の少女を護ろうと、強力なゲストに手を借りながら十把一絡げ程度の魔王を相手に戦う―――そんな単純さがあります。わかる人にはわかるTRPG的に言うならばキャンペーンシナリオではなく、個別の1話完結型のシナリオ―――そんな印象ですね。
個人的には、あまり日の目を見ることの無いキャラクター・クラスである忍者が主人公と言う事で、思い切ったことをしたな&同じキャラクター・クラスばかりが主人公と言うマンネリから脱却しようとしているのかな、と見えてナイトウィザードのまた別の新しい楽しみ方が紹介されたな、と思いました。柊を核に据えたりナイトウィザードっぽいとして転生者や勇者、強化人間がメインな話も良いですが、和風な印象の忍者や龍使い、人狼や吸血鬼、魔獣使いといったマイナーにももっと日の目を!と思っていましたので。
そして作品の内容としては、題の『グランギニョル』のまま、『人形劇』といった印象を覚えましたね。ただし、ハッピーエンドの人形劇で後味の悪さはまったく無かったです。むしろナイトウィザード作品として忍者をメインに据えて、これだけ見事に1話完結として話を作るとは!見たいな感想を1番に覚えましたね。
若干違和感と言うか、魔法名がそうなんだから仕方ないと言うところですが――― 一狼が魔法を使う時、原作設定そのまま「バースト・ジャンプ」や「エア・ブレード」といった名前が書かれていましたがその辺り、忍者的な雰囲気を出した書き方でもよかったんじゃないかな、と少しだけ思うところもありました。忍者が横文字を言うのか…みたいな?あくまで忍者に拘った技名にしてみたりとかでも、ナイトウィザード@忍者的になって面白かったんじゃないかな…と考えてみたり。