レンタルマギカ１

レンタルマギカ ~魔法使い、貸します! (角川スニーカー文庫)

レンタルマギカ１　〜魔法使い、貸します！

著者・三田誠先生、挿絵・ｐａｋｏ先生による異種魔法格闘戦ノベル、ですかね。三田先生は他にスニーカー文庫「精獣戦争」シリーズなどを書かれていて、ｐａｋｏ先生はＰＳ２ゲーム「シャイニング・フォース　イクサ」などの原画を描かれていますね。
・登場人物
主人公の魔眼持ちで社長の伊庭いつき。ヒロインに新入社員でケルト魔術使いの穂波・高瀬・アンブラー。サブキャラクターに陰陽道でオカルト雑誌や占い誌でライター業を営む猫屋敷蓮、８歳の小学生だが巫女でもある神道の葛城みかん。以上が魔法使い派遣会社「アストラル」陣営という形で。
純正魔法使い集団「ゲーティア」陣営として、穂波同様ヒロイン格ということでソロモン王の魔術使いアディリシア・レン・メイザース。
この２陣営が今巻のメインですね。サブとしては「協会」という組織から影崎という両陣営のお目付け役みたいなのが出てきます。
・シナリオ
東に困った人いれば行って陰陽道の札を貼り西に探し物する人あれば行ってダウンジングをする我ら魔法使い派遣会社アストラル。２代目社長に就任した伊庭いつきは慣れない仕事に日々涙目。いつきのふがいなさを嘲笑う同業者は古代ソロモンの魔法「悪魔召喚」を使い、アストラルに挑戦状を叩きつけた。次次と倒される仲間を前に、いつきの真の力が目を覚ます。古代ケルト魔法、黒魔術、神道など世界中の魔法が集結。魔術の夜が始まる。（裏表紙紹介より抜粋）
・感想
今巻は始まりの巻ということで、主人公である伊庭いつきが裏側の世界―――魔法の世界に関わる過程が書かれている、といった感じです。
父親の死後７年が経ち、父親の遺産を受け継いだいつき。その遺産とは魔法使いの結社だった。いつきは極度の臆病ゆえに始めは抵抗するが、生来の困っている人を放っておけない性質から段々関わっていくようになり―――と。典型的ですが巻き込まれ型でスタートする話、という形でしたね。
最初と言う事で色々と派手で目を引く演出が見受けられました。工場を舞台に大規模な呪派汚染が起こり、一帯を異界とした舞台としたり、ソロモン魔術にケルト魔術、神道、陰陽道と登場人物たちの魔術が大盤振る舞いだったりして、最初のインパクトは十分でしたね。そして登場人物たちによる魔術で盛り上がっていき、ラストはいつきの秘密―――魔眼による事態の解決。とても王道的な物語展開でしたが、少しだけ異色さが入っていてそれがまた物語を良い意味で加速していて、最後まで一息に読んでいける作品となっていました。
そして今回の騒動の原因となったアディリシアと父親の確執も、「魔法使い」の世界の話ながら父と娘の愛情話が合間に入ったりして、他人事ではなく一般家庭にも起き得る話を魔術を使う者の話としている、といった趣があり、何処か共感めいた物を感じられる話にもなっていましたね。
総評すると異種魔法格闘戦、というだけあって色々な魔術の話が楽しめたりするややマニア向けな一方で、上記の様なしんみりとした愛情話も楽しめたりして、意外と万人受けする作品ではないでしょうか。