ねくろま。

ねくろま。 (MF文庫J)

ねくろま。 (MF文庫J)

ねくろま。

著者は同レーベル作品に「ホーンテッド!」シリーズや「ソラにウサギがのぼるころ」シリーズなどを出しておられる平坂読先生。挿絵はじろう先生による、新シリーズの微オカルティック・ラブコメディでしょうか。
主人公のソリス・アレクサンドロは優等生で家系的にも優秀な死霊使いの家の出自。他の登場人物はソリスの先輩、後輩たち。そんな彼らと学園生活を送るソリスの前に、ヒロインとしてソリスの幼馴染の女の子マシロが来るところから物語は始まります。ただ普通じゃなかったのは、マシロが5年前に流行り病で死亡していて、やってきたのは動く白骨のスケルトンだったこと。かつてマシロの死亡時にソリスが試みた死者蘇生術の失敗により、重度の幽霊恐怖症になっていたソリスはそんな姿のマシロに恐慌を覚えながらもなんとかマシロを受け入れ、共同生活をはじめる。だが、珍しい理性を持って動くスケルトンという存在とそれを可能にしているマシロの中にあるとある物を求めて動く存在が、ソリスとマシロの生活を脅かす。果たしてソリスとマシロの運命は? といった感じで。
マシロが白骨でありながらも復活した理由、ソリスの恐怖症理由とその克服、ソリスの周囲を取り巻く先輩後輩たちの掛け合い。マシロが5年後でもソリスの元までやってきた理由、など。焦点として据えられている話の肝の部分は、主人公とヒロイン―――ソリスとマシロに関する事が多かったと思います。ですが周りのサブ・キャラクターも味が強く、メインキャラ以外も良く動いていて見せ場もあり、演出は良かったと思いました。
ただし、イメージとしてはやはりヒロインがスケルトンというのは弱かったのではないかと思います。挿絵などで生身状態のマシロのことが描かれていたりもしましたが、それも一部で挿絵としてかかれているマシロは基本スケルトン=白骨。見た目の華やかさがどうしても足りない感じでしたね。挿絵上に描かれているマシロの骨格も、なんだか変でしたし…デッサンが甘い感じがしました。
総評して、「試みは面白いが万人受けはし辛そう」な感じを覚えました。
魔術使用において独特な言い回しによる呪文を使っていたり、ヒロインがスケルトンだったり、先輩が妙に突き抜けた言動をしていたり、後輩はエロス担当だったり、主人公に主人公らしい影と決意があったりと面白いところは多いですが、華が足りない…そんな、今一歩足りない感がしました。
設定の面白さ。その辺りを引き継いだ今後に期待でしょうか。