カレイドスコープのむこうがわ

カレイドスコープのむこうがわ (電撃文庫)

カレイドスコープのむこうがわ (電撃文庫)

カレイドスコープのむこうがわ

所謂、霊能力物というば良いのですかね?サンデーコミックスにあった「GS美神極楽大作戦!」みたいなノリだと思ってもらえばよいかと。
「美神」よりもギャグ要素は無く、真っ当ですけど。
第6回電撃hp小説大賞で<銀賞>を受賞した作品を含む、短編5編から構成されている短編連作作品ですね。
主人公である神田道弘少年は、中学生も終わりの頃に祓い師、門倉淑乃と出会い自分が『同調能力者』と言うものであることを知る。普通の同調能力者と違う少し特別な同調能力者である道弘は、高校生になってからも淑乃にたびたび呼び出され祓い師としての仕事を手伝う事に。
中学生の時に告白紛いの事を受けて以来友人以上恋人未満として付き合っている井上志帆と過ごしたり
淑乃に呼び出されて時に危険もある祓い師の手伝いをしたり
そんな二重生活を過ごす道弘は、その同調能力で様々な世界に触れる… と、いったところが基本設定で。
短編連作と言う事でひとつひとつの出来事が毎度完結しています。
全5話で、第1話で自分の同調能力を知りそれがどういうものか理解する道弘と淑乃との出会いが書かれ、第2話で同調能力で知る祓い師の相手とはどういうものか。第3話では同調能力を使って兄妹を救う話。第4話は以前に淑乃と組んでいた同調能力者が道弘を見極め、また鍛えようとやって来る話。最後の第5話では不思議な少女と道弘が邂逅を果たす話。
それぞれがテーマ的なものを持っていて、それをちゃんと書いている感じでしたね。
同調という、相手と自分の垣根を越える能力で相手を知る力。それを以って霊魂、人、妖異、そういった心を描写していてそれらに触れることで少しづつ成長していく道弘。この作品は、そんな少年の成長の話だと思えます。
霊魂、人、妖異といった様々な心の模様が万華鏡の如くで、その向こう側に見えるものを知り道弘少年は成長していく。だからこその「カレイドスコープのむこうがわ」というタイトルなのだろうな、と思いました。