殺×愛 SIX

殺×愛6―きるらぶSIX (富士見ファンタジア文庫)

殺×愛6―きるらぶSIX (富士見ファンタジア文庫)

殺×愛

ゆっくりと滅びていく世界で、世界の滅びを見届けるまで生き残る事を運命付けられそれまでは死ぬことの無い存在「オメガ」こと椎堂密と、世界を滅ぼす者である天使を殺すことのできる対天使兵器(ルシフェリオン)の少女サクヤとの、不器用な恋愛模様が書かれた作品です。
「オメガ」である密は世界の滅びを見届けるまでは死ぬ事は無いが、唯一の例外がある。それは、密と相思相愛の相手が密を殺せば密が生き返らないというもの。
世界のために密を殺しに来たサクヤはその事実を知り、密と恋愛する『契約』をする。だが、密の心中には別の女性がいてそのことが密とサクヤの関係をより複雑な物に。
そうして始まった物語の中で、心中の女性の存在からサクヤを傷つけてしまう選択を選んだ密は、サクヤではなく幼馴染の萌月来夏と付き合うことにする。恋人となった来夏と共に、密はつかの間の休息のつもりで町から少し離れた場所に旅行に行く。だが、その間に天使の大攻勢が起きたことにより数多くの日常の象徴…密の友人やクラスメートが次々に天使に「回収」され、この世を去る。加速的に崩壊していく日常/世界。
第6巻では、多くの友人が死に、崩壊が加速した世界で傷つけてしまったサクヤを気にしながらも家を「回収」されて住む場所の無くなった来夏と同棲生活をはじめる所から始まります。
この巻も、どんどんと鬱なストーリー展開が進んでいってます。
人が死に、悲しむ人が多く登場し、救いのある話として終われるのかと思うほどに密が追い詰められていきます。
すれ違ったサクヤと密の関係もさることながら、来夏が全てを知り、それでも世界を救うことよりも密と生きる事を選び密と逃げようとする姿は今巻での見所でしょうね。
一途に想い続けた純愛のために、世界と恋人とで迷わず恋人を選ぶ来夏。
そしてその決断で相対する事になった運命に、最後まで正面から立ち向かったその姿は密の相思相愛の相手ではないとしても、輝く姿として心中に残りました。
総評して、殺×愛シリーズはとても鬱な展開が多いというか救われない話が多いですが、それらを差し置いてもその果てにある結末を見たくなるほどにキャラクターたちが魅力的です。
密をただ愛し、恋してひたすらに一緒に幸せになりたいと願う来夏。
密に恋をしながらも、世界の為に殺さなければならず、その葛藤に苦悩するサクヤ。
2人の女性の、それぞれの形のまっすぐで不器用な恋模様とその交錯。
それがこの巻の印象でしたね…。