私立!三十三間堂学院5

私立!三十三間堂学院〈5〉 (電撃文庫)

私立!三十三間堂学院〈5〉 (電撃文庫)

私立!三十三間堂学院 5

天国に涙はいらない」などの著作を持つ佐藤ケイ先生によるシリーズの第5巻。
お嬢様で女子生徒ばかりの三十三間堂学院の共学化に先駆け、1人だけ受け入れる事になった男子生徒。その男子生徒こと「後白河法行」を主人公に、様々な女生徒たちとの交流を書かれるシリーズ。それがこの「私立!三十三間堂学院」です。
ただまぁ、今巻は主人公である法行はスパイス程度にしか活躍していません。ヒロインである六道明日香の不幸を彩る為の添え物というか…明日香が初めて淡い恋心のような物を感じた相手だが、生徒会によってそれさえも認められない形になり、と。結局のところ明日香と生徒会の対立に巻き込まれているだけ、みたいな?
今巻では、先も書きましたが不良少女として名が知られる「六道明日香(りくどう あすか)」がメイン。
実は不良少女だったのは中学までで、今は中学の時に世話になった先輩であり自分を理解してくれた三十三間堂学院に通う3年生の「乾樹葉(いぬい たつは)」を追って三十三間堂に入学してきた明日香は、言葉使いなどはまだ荒いながらも真っ当に生きようとしていた。決して裕福ではない叔母の家に恐縮しながら下宿し、学校では捨て猫に自分の昼食を全て与えながらこっそり飼いつつ、バイトをして生活費を稼ぎながら三十三間堂に通学するという苦しい日々。だけどそうまでして三十三間堂に通う理由である樹葉には、自分のことを忘れているかもしれないという思いから中々会う決心もつかない。そもそも樹葉が何処のクラスかもわからない。そんな苦労を重ねる生活の日々。だが、そんな明日香の毎日に転機が訪れる。
たまたま大荷物を持っていた老婆を手助けしようと明日香は声をかけるが、昔の荒っぽい口調のせいで誤解され怯えられてしまう。そこに生徒会副会長の柴又かずちが割って入り、事態はややこしい事に。ひったくりと間違えられた明日香は翌日、生徒会に呼び出され罰として反省房に入れられることに。が、そこに話を聞いて明日香の事を覚えていた樹葉が二人だけで話をしたいといって入ってきたが、話をしようとした直前に窓から飛び込んできたボールで怪我をする。そしてそれを、またも誤解から明日香がしたことになってしまい…と、これ以降も次々と明日香に不幸な偶然が連続して起こります。
縋るものを見つけては取り上げられの連続、という形は、偶然の積み重なりとは言えかなりキツイ話ですね。正直に言うと、読んでいる間は明日香が不憫でたまりませんでした。生徒会長が不在の為、副会長として必死に頑張っているかずちでしたが、それを差し引いてもかずちを見る目が180度反転しましたよ。もっと明日香の話も聞いてやれよー、と。
総評して、今巻は偶然と不幸の連続から1人の少女が挫け、倒れかけ、それでも最後には理解してもらえて助け起こされるまでが書かれている、といった感じですね。
一時に次々と明日香に襲い掛かる不幸。それを受けても倒れまいとしている少女の健気さは、見た目とのギャップもあって私のツボにも入りました。
見た目は不良少女だが心根は一本気の入った真面目な苦学生、六道明日香。「私立!三十三間堂学院」シリーズで一番好きになりそうなキャラクターです。