世界平和は一家団欒のあとに

世界平和は一家団欒のあとに (電撃文庫)

世界平和は一家団欒のあとに (電撃文庫)

世界平和は一家団欒のあとに

第13回電撃小説大賞「金賞」受賞作品。
世界を救う<運命>の下にいる一家、星弓家。
必ず何某かの「世界の危機」に巻き込まれるその一家の長男である星弓軋人は、今回もその「世界の危機」らしきものと遭遇する。3体の怪人に襲われている保健室で知り合った顔見知りの下級生、柚島香奈子。伊達に何度も世界の危機を救っていない軋人はあっさりと怪人を撃退するが、柚島から聞いた話だと狙われている『理由』は推測できても『相手』がサッパリわからない。そんなことを考えながら香奈子の護衛の日々が始まるが、軋人にはそれだけではない事態がおきていた。次女が宇宙で預かってきて無くした地球破壊砲Gキャノンのスイッチは探さないといけないし、弟、刻人は様子がおかしいし、三女、美智乃もなんだか思いつめた様で変だ。俺は誰と戦えば良いんだ―――?そんな超常的な生活を送りながら悩む軋人の、これは過去との決着の物語。
まず設定ありきでというか、とんでもないスケールで示される星弓一家。そしてそれらを消化していくキャラクターたち。異世界に宇宙に魔法に地球破壊と世界的危機の名に恥じないスケールがドコドコと出てきますが、話の要点は軋人の過去の間違いと、それから起こる弟と妹の暴走といった感じで、大風呂敷を広げてもその中に包むのはきちんと纏まった箱 という感じで、大掛かりな設定と話の中での小さな事件、といった様相です。
ですがそれだけに、そこに至るまでのキャラクターそれぞれの内面の葛藤とかが見えやすく、読んでいて互いへの関心が見えました。無関心になりやすい昨今、こういった「家族だから」というだたそれだけの理由で関心が持てるのは良いですね。
総評して、金賞にこれもまた相応しい作品だったと思います。「扉の外」が読みきりというかそこで終了という感じの強い作品であったなら、こちらはここからまだ続いていく作品。出番のあまり無かった長女や長期出張中ということでまったく出てこなかった父親などと、今後の展開にも耐えうる要素があるだけに、こちらは続刊で続くのではないかなー、とも思えますしね。