でたまか/アウトニア王国再興録1 英雄待望編

でたまか/アウトニア王国再興録1 英雄待望編

で、早速読み終えたSF戦記物「でたまか」シリーズの第2期第1巻。
第1期はマガザン帝国仕官学校での戦略シミュレーション上で「無敵艦隊提督」と呼ばれていたマイド・ガーナッシュが、その戦略の天才性ゆえに貴族の不況を買い偏狭のアウトニア王国防衛隊にトバされて来る事から始まる。嘆きながらも、現地の温かい人柄の住民たちと触れ合ううちに第二の故郷としてアウトニアを愛しはじめ、孤立無援で帝国の宿敵であるローデス連合を知恵と知略、そして人脈とを駆使して退ける。だがそれにより一躍帝国の時の人となったマイドは、またも貴族の不況を買ってしまい特に仲の悪かったマルス家のアリクレストにより、今度は皇太子殺害の重犯罪人として仕立て上げられてしまう。忠実な家臣であるヴァルや、仲間たちの手助けもあって辛くも逃走に成功するマイドだったが、時同じくして新皇帝として即位したアリクレストによってアウトニアが滅亡させられてしまう…。それから数年の月日がたち、マイドと仲間たちは王国復興を目指し今は地下に潜伏していた―――。と、これが今巻以前のストーリーダイジェスト。
前巻までが主人公であるマイド・ガーナッシュによる視点での話でしたが、今巻は三人称視点。マイドの仲間だった者たちが、英雄であるマイドの再蜂起を待ち望みながら影でアウトニア再興の活動をしていたり、マガザン帝国軍として神聖ローデス連合軍と戦っている姿が書かれています。
作者先生の「鷹見一幸」先生は、虚飾の無い生の感情を文体として直接書かれる方なので、実に真摯な言葉としてキャラクターたちが発言しています。なので、ものすごい無能な上役と、その為に苦労を強いられている下っ端と言う姿が如実に書かれています。その直撃の感情が鷹見先生の作品の面白いところですね。
総評して、今巻は新皇帝アリクレストが起こしたマガザン帝国と神聖ローデス連合との戦いに苦労する元アウトニア王国の軍人たちや帝国軍人たち、それとアウトニア再興の為に影で色々と活動しているヴァルやメイ王女の姿がメインでしたね。
マイドがなかなか出てこず、じりじりと期待感を盛り上げての話。ですが最後には「でたまか」を見せてくれますし、老兵たちによる最後の意地を見せたりする場面があったりと、見所も多かったです。