バカとテストと召還獣

バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)

バカとテストと召還獣

新人作家による新シリーズラッシュとでも言えばよいのですかね?エンターブレインによる『えんため大賞』の第8回での編集部特別賞受賞作だそうです。
ストーリー的には学園もの。ただし、特殊なカリキュラム…と言うか、制度を導入している学校が舞台でして。
生徒は全員、期間ごとにあるテストで得た点数に応じてA〜Fクラスに割り振られる。クラスはそれぞれ特色があり、Aクラスだと冷暖房完備の冷蔵庫添え付け、内容物は学校からの支給、机と椅子はシステムデスクにリクライニングシート…といった豪華絢爛さ。対して最下位のFクラスは黴臭い畳み敷きの教室に壊れかけた卓袱台が机で椅子は座布団の綿無し。と言った具合で。そしてこれらのクラスへの配属を決めるテストは上限は無く、時間内にどれだけ点数が取れるかで総合得点は決定する。なので、完全に「勉強ができる人間が一番得をする」と、そういう制度状態。それがこの学校の舞台であり、同時に主人公である吉井明久たちがこの小説の物語―――『Fクラスによる打倒Aクラス』を、起こすきっかけとなった設定です。
前述の設備の差に憤慨したFクラスの面々は、明久の友人でFクラスを率いるリーダーの『坂本雄二』の智謀と、たまたまクラス割り振りテストの時に高熱を出してしまいAクラスの実力者ながらFクラスに編入されてきた『姫路瑞希』の協力も得て、着々とD、C、Bクラスを打倒していきます。そして迎えるFクラス対Aクラス。
果たしてFクラスは、打倒Aクラス成るか…!?というのが、この本での大まかな話かと。
この物語、キャラクターの発想が斜め上を行っている言動が多くて、読んでいてかなり意表を疲れた笑いを引き出されます。
まず章と章の合間に、扉絵代わりに『バカテスト』なるものがあります。これはいわゆる普通のテスト問題(数学ならSinとかTanとかの数式を使ってやるアレですね)を、優等生の瑞希の回答を見た後でバカ代表の二人、吉井明久と土屋康太の答えとを見比べてみようと言う形になっているものです。これが凄いです。さすがバカ!発想が違いすぎる!?と、思わず吹き出してしまう答えが目白押しです。ここが笑いを引き出される一点。
そしてもう一点が、本文内容中の明久の超発想。友人の女生徒が自分を心配して捕まったと聞けば「アレは偽者だ!」、自己紹介では「僕のことは気軽に『ダーリン』と呼んでくれ!」とか、愛すべきバカとして大活躍してくれます。彼の地の文は読んでいるだけで笑いが出てきます。ある意味で凄かったです。
総評して、本作は会話が多くテンポ良く進んでいきますね。
ですがその分、説明不足なままで邁進していた部位もあったりして中々自己補填が必要な場合も多かったりしましたが、キャラクターの魅力と勢い、それと発想の勝利と言う形でしょうか。テストの点数で勝負という形に、召還獣という要素を入れてイメージしやすくし、その上で奇策、戦術で勝利していくと言う作風は、読んでいて次の手が楽しみになり次第とページをめくる手も早くなっていったと言うものでした。
召還獣についての掘り下げや姫路瑞希がヒロインの筈の割に目立った活躍が見れなかった事も踏まえて、できれば次回作が読みたくなる作品でしたね。