きゅーきゅーキュート!3

きゅーきゅーキュート!〈3〉 (MF文庫J)

きゅーきゅーキュート!〈3〉 (MF文庫J)

きゅーきゅーキュート!3

魔界からきた才能が偏り気味で幻惑術しかまだ使えない公爵家の女児、キュートと、能力使用まで後一歩であるという『能力値99』を長年保持し続けていた特殊能力者予備軍みたいだった高校生、春日理刀との恋愛コメディシリーズ。その第3巻ですね。
今巻は理刀やキュートの友人である亜威黒媛の妹、百香が、能力使用のボーダーラインとされる『能力値100』を超えていながら使えないでいた能力が使えるようになるまでを書いていますかね。
ストーリーはキュートの666人いる姉の2人、ゴルゴンゾラとパルメザンというチーズみたいな名前の双子が、面白半分で百香に『封印庭』という魔術アイテムを渡した事で始まります。封印庭とは中に異空間が詰まったもので、付属されている宝石を外すと中身が現実世界で展開されると言うものの様子。これによって、亜威邸は一瞬にして黄泉へ続く場所がある危険なジャングルと一体化してしまいます。これが今回の舞台です。
百香が中に居ると知り、躊躇せずに飛び込む黒媛。その後を追う理刀、キュート、スィート、毒舌丸、巴たちだが、随所に仕掛けられた転移魔方陣によってバラバラになってしまう。理刀と巴、キュートとスィートと毒舌丸、黒媛と百香、という3つのグループに別れる事になった彼ら彼女らは、ジャングルを突破しながら封印庭に再度宝石を装着し、封印庭を元に戻せるのか… と。
合間合間に場面転換が起こり、それぞれがどうしているのかが見せ、別の場所で別のグループが起こした行動の結果が、他の場所のメンバーに影響を与えたりと、複数グループの描写はけっこう上手く出来ていましたね。
ただ、最後は封印庭を閉じて終わるのですが、それまでに知り合った部族の人たちと一緒に開きかけた黄泉路に続く場所を閉じようとしていた時に、黄泉から溢れてくる死霊たちに対抗できなくなり最後の手段として封印庭ごと封印して終わり、という形を取るのですが、そんなことしたら中にいた部族の人たちとかどうするんだろう。封印庭からは出られないわけだし、置いてけぼりかよ!?みたいな感じでイマイチこれで良いのか?的な感じが否めませんでした。
総評して、ラストは若干「?」な印象を受けつつも、今回のメインの1人である百香の成長譚としては上々の出来であったのではないかと。危険に際して能力が目覚めると言うのは、王道的で使い古された感じがあっても、やはり納得できる説得力がありますからねぇ。