神曲奏界ポリフォニカ サイレント・ブラック

神曲奏界ポリフォニカ サイレント・ブラック

昨年夏に出ていながら、ついつい積んでしまっていたシェアードワールドポリフォニカシリーズの通称「黒ポリ」のシリーズ第2巻。
「まぁぶる」を読み「白ポリ」の新刊分を読んだ勢いで手をつけて完読。
巨漢の姿をした上級精霊で契約精霊の「マナガリアスティノークル・ラグ・エデュライケリアス」と、その契約相手で階級が警部の神曲楽士警官「マチヤ・マティア」のコンビが精霊に関連する、あるいは精霊を使ったと思われる事件の顛末を書くシリーズです。
今巻では最初から犯人はわかっています。冒頭で殺害される「ゴトウ・ヴァリエド」生態工学博士の妻の「ゴトウ・キルアラ」です。キルアラによる地の文で冒頭の事件が起こり、次章からマナガとマティアの視点で犯人捜査を追いかける、ということになるんです。
いわゆる犯人が誰か読者にはわかっていて、それを追う主人公たちを眺める、という類の小説になりますね。
ただし、殺害の方法は冒頭では読者には明かされずわかっていませんので、マナガたちと一緒に読者は「殺害方法」を模索するということになるんですかね。まぁこの「殺害方法」も、ポリフォニカ世界特有の方法が用いられているので中々推測はし辛い方法だったりするのですが。
総評して、今巻はポリフォニカシリーズで重要な要素である「神曲」がキーになりますね。「神曲」とは何か。何ができるのか。神曲が精霊に与える影響とはどの程度までなのか。神曲が人に与える影響は無いのか?と
そして同時に、キルアラという女性の壊れた心情の物語でもあります。彼女が夫や他の人間たちを殺害をするようになった理由、意味。
この巻は、人の心に生まれた憎悪の連鎖の物語。そう思いましたね。
救いの少ない、悲しくしんみりとした、だがだからこそ最後が心に染み入るその結末を、ブルース・ハープの寂しげな音色に耳を傾けるようにじっくりと読んで頂きたいですね…。