神様のメモ帳

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳

第12回電撃大賞で『銀賞』を受賞した、『火目の巫女 (電撃文庫)』シリーズを出していた杉井光先生による作品です。
読み切りっぽいですけど、次回にも続けられる出来ですね。
ストーリーは、転校してきたばかりの高校一年生で文体中で主文を務める「藤島鳴海」こと『僕』は、学校でおせっかい焼きな女生徒「篠崎彩夏」によって園芸部に強引に入部させられる。それをきっかけに彩夏に引っ張りまわされるようになった鳴海は、彼女のバイト先であるラーメンはなまるに連れて行かれるが、そこはニートと呼ばれる未就職者たちが集まる溜まり場でもあった。そしてそこで鳴海は、『ニート探偵』を称する紫苑寺有子こと「アリス」を始めとする「ヒロ」「テツ」「少佐」「四代目」などの一風変わった仲間たちと出会う。だがそれが、鳴海が都市に蔓延る恐怖のドラッグ、<エンジェル・フィックス>事件に関わる最初の一歩だったのである―――。と、こんな感じです。

<エンジェル・フィックス>事件に巻き込まれる彩夏とその兄。普通とは違うルートでばら撒かれるエンジェル・フィックスに正体の見えない元締め。事件解決のため、鳴海が下す決断―――。

少しづつ明かされていくエンジェル・フィックスの販売ルートの謎と、製造ルートの謎は、読んでいる間まさに自分が追いかけているような気持ちになります。一足飛びに事態が解決に向かうわけではなく、集まった情報で少しづつ少しづつと進んでいくその様は素晴らしいと思いました。読ませる謎解き、と言えばいいのでしょうかね。気がつけば夢中になって読んでいました。
登場人物たちは結構多くてそれぞれに特徴というか特技があるのですが、それらが美味く噛み合って事件解決に向かっていくと言うか。ストーリー展開上で必要な技能を持った者が配置されていると言うかで、ややご都合を感じる所もありますが、伏線の張り方が上手いのであまり気になりません。なので、かなり上手に纏まっているのではないかと。
無力な高校生がその無力さに嘆き涙しつつも、精一杯あがき、事件解決に奔走する様はまさにオビに書いてある通りの「ティーン・ストーリー」だと思えましたね。
総評して、若い頃、あるいは現在進行形で自分に無力感を感じる人なんかが読むと共感する部分も多く、またただその状態で言い訳が無い、と感じられるのではないかと思えましたね。