ネコのおと

ネコのおと

現実と作品世界とのクロスオーバーをリレー小説で表現。そう書けばこれを一番簡潔に説明できますかね。
全7章構成の作品で、章ごとに執筆者が違うというものです。第1〜2章は作品世界の面々が主視点で、第3章から現実世界―――ぶっちゃけていうと、作者が作品に登場したりするメタな世界観になります。
書いた事が現実化する…こともある、『クラスのための学級日誌』。これを発端に起きる様々な事件。各作者たちによる、自分の作品の主人公や登場人物との遭遇。時には協力され、時には裏切られながら、章を進めるごとに代わっていく書き手に合わせて視点や協力者たちを変えつつ物語は進んでいきます。そして最後は意外な伏線明かしと、結末が…
総評して、もうこれは完全なお祭り小説。
作者と作品世界の主人公たちとの遭遇など、巻末の後書きでしか見ないようなことを作中でやっている作品です。
また、主題は『クラスのための学級日誌』という存在を追いかけるという話ですが、リレー小説だけに一貫性が無いというか、それぞれがそれぞれの得意分野を書いていると言う感じですので、纏まりは正直言ってありません。
普段あまり富士見ミステリー文庫を読んでいない人が、ちょっと手にとって読んでみる…というには、まったくもって向かないと断言できるでしょう。つか、登場人物たちが誰が誰だかわからないでしょうね。殆ど説明はありませんし。ですが逆に、多くのシリーズを読んでいる人にはかなり笑える、あるいは楽しめる作品では無いでしょうか。次々に変わる登場人物。おおこいつが出るか。ああこいつならここはこうするよなぁ。とね?