メイド刑事3

メイド刑事

警察庁長官のお屋敷に仕えるメイド、若槻葵。プロのメイドである彼女だが、彼女にはもう1つの顔がある。それが、警察庁長官、海藤俊昭直属として影で動き犯罪者を裁く『メイド刑事』である―――。の、シリーズの第3巻。
相変わらずテンポよく読めます。スピーディです。読了まで1時間弱と言ったところでしょうか。2時間は掛かっていません。
今回収録は全部で2話。第7話「怪奇!幽霊の棲む館 爆裂娘登場」と第8話「葵、爆発三秒前!白薔薇は死の香り」です。
第7話では葵の妹分として、海藤の執事、朝倉老人の孫娘の聖(ルカ)が登場し、世間の厳しさを知りつつ葵を、ひいてはメイドとメイド刑事を知っていく過程が書かれています。そしてルカの友人堀ノ内静香の屋敷に幽霊騒ぎが起き、それを知った海藤がルカの為に、葵をメイド刑事として派遣…幽霊の正体は?となっていきます。
途中から怪しい人間がはっきりわかりますが、しかしそれが拍子抜けではありません。お約束を踏襲した展開で、明らかにこいつが犯人!とわかりつつもストーリーを楽しめる、と申しましょうか。
第8話では怪しいメールを受け取った佐原という社長が、それを海藤の屋敷へ相談に来るところから始まります。小学生の娘、佐原美咲と佐原社長の二人だけの家族である佐原一家を護る為、葵が佐原家へメイドとして派遣されるが、そこには全身白尽くめの怪しいメイド、黒須貴美香と以前の事件で協力した事がある「流れメイド」のニキータがいて―――と、なります。
第8話では以前の巻で登場した、葵の両親を間接的に殺害した主犯である男が登場し、葵の因縁も交えた展開となっていきます。
総評して、このメイド刑事シリーズは、作者によるあとがきにもかかれているのですが往年の名作「スケバン刑事」シリーズの方法論を見習って書かれている作品です。その事もあり、今巻では所謂テコ入れ。新キャラクターで準主人公とも言えるキャラや、ライバルキャラの登場など話に広がりと味付けが為されています。これまでの登場人物は色々とありながらもメインは葵一点だったところに、他に焦点を集めるキャラが出たわけです。が、それで話の内容が散文的になるということも無く、結局は一貫してメイド刑事・若槻葵の活躍が描かれているのには、作者や編集者の文章構成力が見えます。
平時は普通のメイドとしてお屋敷に勤め、御主人様の要請あらば如何なる事件でも出向くメイド刑事、葵。今後の刊行が楽しみです。(^^