ソードアート・オンライン4

ソードアートオンライン4 フェアリィ・ダンス

著者・川原礫先生。挿絵・Abec先生。大人気オンライン小説の紙媒体版、第4作目です。
・シナリオ
SAOから未だ帰還しないアスナを救うため、疑惑のVRMMO“アルヴヘイム・オンライン”にログインしたキリト。その次世代飛行系ゲーム“ALO”は、“魔法”という概念、プレイヤーの反応力と判断力が勝敗を決めるアクション要素、そして“妖精”となって空を駆け巡る“飛翔システム”と、“SAO”に勝るとも劣らない高スペックで数多のプレイヤーを魅了していた。“妖精”スプリガンとなったキリトは、アスナの幽閉先―全プレイヤーの最終目標“世界樹”目指し突き進む…!道中、妖精種族“サラマンダー”のプレイヤーたちの策略により、絶体絶命の危機に陥るキリトだったが、“シルフ”の少女・リーファの助力、ナビゲートピクシー・ユイのバックアップを受け、どうにか九死に一生を得る。そしてついにキリトは“世界樹”の根元までたどり着く。しかしそのとき、リーファとキリトは互いの“秘密”を知ってしまい…。(Amazon商品紹介ページより抜粋。)
・感想
今回は妖精となって空を舞いながら剣や魔法で戦うというオンライン・ゲームを舞台にした、キリトによるアスナ救出物語の終幕版です。
義理の妹、直葉のアバターリーファ」とお互いに兄妹と知らぬままALOで出会い、同行してアスナが囚われていると思われる世界樹ユグドラシルを目指すキリトとリーファ。今回でその旅が終わるまでが書かれていました。
全体的にちょっと急ぎ足感があります。でもそれを気にさせないギミックも盛りだくさんですね。キリト=和人、リーファ=直葉が明らかになり、兄妹の関係なのに感じる心の動きに戸惑う直葉の姿に心くすぐられ、黒幕・須郷の小悪党ぶりとVRMMOをただの【ゲーム】だと見下している大人の汚さに憤り、和人が須郷と相対したときの主人公らしい啖呵と、現実の無力さの中でSAOで得た知識からの逆転劇。数多くの展開が目まぐるしく起こり、それらの中でそれぞれに見所がありました。
特に個人的には須郷がVRMMOを見下していて、クエストっぽく設定しておきながらクリアフラグを用意していない、というものにゲーム好きな1ユーザーとして激しく苛立ちを感じましたね。どんなものであれ、クエストを設定した以上は攻略法を用意しておくのがGM。なのにその義務を放棄していた須郷のやりようには性格や小悪党というもの以上に憤りを感じずにはいられませんでした。そういう意味では川原礫先生は読者が感じる「ゲームに関係している嫌な悪党」に精通していてとても秀逸だった、とも言えますね。
今回の話も含めて読み終わった感想を述べると、SAOの第2巻の短編集は除きますが、第3〜4巻と使って語られた、SAO1巻という1つの物語の長い長いエピローグという感じでしたね。第1巻のラスト、茅場晶彦を打ち倒し現実世界に戻ったキリトが、アスナを現実でも取り戻し、本当の意味でソードアート・オンラインというゲームと決別するまで…そんな一人の少年の成長の一端が見られた気がしました。特にその集大成が、第4巻ラストで「SAOの黒の剣士・キリト」か「ALOのスプリガン・キリト」か姿を選べるとなった時のキリトの選択に出ていた…そう思いました。
これで大団円的にSAOから続く話は終わりましたが、最後の展開で新しいオンライン・ゲームの世界も広がっているとされ、さらに予告では剣と魔法のファンタジー話が続いていた今までから一転した、銃と鋼鉄の世界『ガンゲイル・オンライン』の存在が語られるなどSAOの世界はまだまだ続いていくようで期待が薄まりません。二刀流の剣士キリトは、銃と鋼鉄の世界でもやはり二丁拳銃のキリトとなるのでしょうか。次巻が待ち遠しいです。(^^