アルシャードガイア・リプレイ 君といるセカイ

アルシャードガイア リプレイ 君といるセカイ (ファミ通文庫)

アルシャードガイア　リプレイ　君といるセカイ

著者・藤井忍先生。挿絵・ぽぽるちゃ先生。藤井先生は、「ＤＸ２リプレイ・ゆにばーさる」で短編でリプレイライターデビューされ、「ＤＸ３リプレイ・ジェネシス」ではＰＣとしてヒロインの敷島あやめを演じられたりしていますね。ＰＣは豪華極まりない面々で、Ｆ．Ｅ．Ａ．Ｒ．代表取締役社長の鈴吹太郎社長、同副社長の菊池たけし先生、今回遊ばれる「アルシャードガイア」の共同デザイナーの井上純弌先生と、同ゲームのシステムデザイナーの遠藤卓司先生です。
・シナリオ
「世界を滅亡から救って」少女はそう言った—。彼女の世界は四つに分岐し、このままではマナ不足で消滅する。そこで世界統合のための優先順位を決める“希望存在”として、聖翔華学園に通う四名の少年クエスターたちが互いに戦うことに。世界の命運を賭ける種目は…文化祭の出展勝負！？だが勝負が始まると、事態は思わぬ方向へ動き出す！！新鋭女性ＧＭ対最強プレイヤー陣の対決（？）で話題をさらったＦＢｏｎｌｉｎｅの連載が、書き下ろしを加え文庫化。（７＆ＹＨＰ商品紹介ページより抜粋。）
・登場人物
この作品ではＰＣは１〜４などの数字ではなく、公平を期して全員が主人公格となるためにトランプのマークが使われていました。即ち
ＰＣスペードは鈴吹太郎社長が扮する、アーティスト１／リターナー５／ホワイトメイジ１のロックンローラーで、歌で誰かを支援するという形の未来から現代に来た、という設定のミュージシャン・岩戸転。ヒロインは堅物優等生な新橋浅葱。
ＰＣハートは井上純弌先生扮する、ファイター１／ルーンナイト２／サイキック４のオカマキャラで、特殊な武装「ルーンメタル」で武装して遠距離から攻撃することで戦うという、ファイターなのに前衛で戦わないという塞翁寺蘭。ヒロインは妾ちゃんな刈安山吹。
ＰＣダイヤは菊池たけし先生扮する、アルケミスト４／ブラックマジシャン１／サモナー２の傲慢系生徒会長で、チャンバーウェポンという武器を手に接近戦で敵を叩くという塞翁寺の逆の特性を持つ夷神瞬。ヒロインは天然ドジっ娘の常盤若葉。
ＰＣクラブは遠藤卓司先生扮する、スカウト１／ガンスリンガー４／ソードマスター２で、「固定値は俺を裏切らない」というコンセプトの元、サイコロの出目に結果を左右されにくい構成で出来ているリョージ・Ｒ・クエスター。ヒロインはツンデレポニテ娘の浅緋銀朱。
という具合に。誰もが主人公、というコンセプトになっています。
・感想
この作品はＰｖＰ―――（Ｐｌａｙｅｒ　ＶＳ　Ｐｌａｙｅｒ）を表に出しつつ、最終的には従来通りのパーティを組んでのボスとの対決になる、という流れに見えました。
収録されているのは表題作でもある第０１話「君といるセカイ」と、第０２話「君といるミライ」の２話。
第０１話は対立状態として集められたＰＣたちが互いに競争などで勝負をし、その結果シナリオが進んでいくという話で対立から共闘になる展開が綺麗でした。明らかな敵役を出すことで対立関係のＰＣたちがヒロインのために共闘を始める―――その流れはシンプルなだけに、敵役を出す絶妙なタイミング、ヒロインの魅力、ＰＣたちの協力のどれが無くても成り立たなかったろう、と。
第０２話は第０１話の後日談にして完結編的な意味合い。第０１話の敵役が敵役となった理由と、黒幕の登場が物語に深みを出し、登場するサブヒロインがＰＣたちとヒロインたちの絆を繋ぐ橋渡し役として話を盛り上げていました。
またＰＣたちそれぞれに対応する形で登場するヒロインも個性豊かで、彼女たちとＰＣたちとの掛け合いはそれぞれのＰＣの個性の溢れる主張と相まって大変魅力的でした。特に塞翁寺と山吹のペアは、塞翁寺というキャラクターの濃さがそのまま保護者的立場になる、ということの説得力になっていて実に自然な流れでの関係性の樹立が見ていて心地良かったですね。恋人関係の二人、というより母（父？）と娘、って感じでほのぼのとしました。
総じてこの作品は、ＰＣたちとそれに対応するヒロインたち、というパーティが未来を掴むために戦う、という話になるのですがＰＣもＮＰＣも個性豊かなキャラクターが揃っていて、掛け合いが見ていて飽きないというセッションが楽しめると思います。