ごくペン!

ごくペン! (MF文庫J)

ごくペン! (MF文庫J)

ごくペン!

著者・三原みつき先生。挿絵・相音うしお先生。第5回MF文庫Jライトノベル新人賞『審査員特別賞』受賞作品です。
・シナリオ
偏差値70オーバーのぼくこと五十嵐真太郎がバカの殿堂として名を馴せる毒マムシ学園に転校したのには重大な理由がある!一緒に東大に入ろうと約束した幼馴染みの権田原凛子がこの学園に通っているという噂を聞いたからだ!想像以上に古風で脳天気なヤンキーの吹きだまりだが、ツッコミどころ満載のおかしな彼らに思わずツッコミを入れまくっているうちに、ぼくはヤンキーたちから崇められるようになってしまった。そして再会した凛子は—なぜか私設極道の女親分になっているぅ!?明朗にして軽快に魅せる第5回MF文庫Jライトノベル新人賞審査員特別賞受賞作。(7&YHP商品紹介ページより抜粋。)
・感想
この作品は偏差値70越えという頭の良さではエリートの主人公・五十嵐真太郎が、幼い頃に「一緒に東大へ行こう」と約束したヒロイン・権田原凛子の行方を追って有名な馬鹿高校・毒マムシ学園に転校し、そこでヒロインとの再会を経て彼女がその学校にいる理由、そして馬鹿高校に通う『バカ』と呼ばれる人たちとふれあい彼らを理解していく、そしてやがて学園を支配する体制、巨悪と闘うことになっていく―――という話です。
頭が良いからこそこれまで接することの無かった存在たちと主人公が初めての遭遇を経て、彼らを理解していく―――と書くと大変に上から目線みたいに聞こえますが、実際の内容は多勢の「バカ」たちに混じることで彼らの言動にツッコミを入れたりして理解していくので、同じ立場で接している、「バカを馬鹿にしている主人公」というものではなく、あくまで「ツッコミ役としてツッコミを入れているうちに彼らを理解していく主人公」という『朱に交われば赤くなる』といった内容でしたね。ちなみにこのツッコミも、かなり切れが良く、誰かがボケた時に読み手が思わず思うだろうことを的確にツッコンでいます。その辺りの爽快さも見事なものでした。
また、バカなやつらバカなやつらと書きましたが、作中でバカとされている「ヤクザ」や「ヤンキー」たちを初めとしたサブキャラクターたちは、しかし文字通りの存在ではありません。見た目は世紀末救世主伝説に出てくるような棘付の上着やモヒカンをしていたりする、でも頭の中身はギャグ漫画というような、容姿と言動が突拍子も無い「愛すべきバカ」という存在で、発想が斜め上を行くある意味で頭の良いバカたちで見ていて面白いです。
ヒロインの権田原凛子はなかなか新しいヒロインです。素直になれない極道少女…というよりはソフトで。出生の仁義の見事な切り方とか、普段は和服でもカチコミの時はもろ肌を見せることも厭わず行動的とか、でも真太郎の前では甘えるとか。漫画「瀬戸の花嫁」の瀬戸燦が近いイメージかと思います。
総じてこの作品は、混沌とした学園生活の中で1つスジを通して生きようとする者たちの学園青春物語でした。その中でギャグあり、お色気あり、青春あり、バトルありと、とてもライトノベルらしい作品だったと思いましたね。