神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・ゴールド

神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・ゴールド

著者・大迫純一先生。挿絵・忍青龍先生による通称『黒ポリ』と呼ばれる神曲奏界ポリフォニカBLACKシリーズでサブキャラクターとして登場した人物を主役に据えて送られるスピンオフ小説ですが、すでに別個として確立しているといって良いほどに作品が出ていますね。
・シナリオ
「お前らぁあ、もっとダイエットしやがれええっ!!」
 あたしとリサノアを両脇に抱えたまま、レオンが全速力で遺跡の石畳を駆け抜ける。なにしろすぐそこまで迫って来てるからね、崩れてくる天井が!
 ケセラテ自然公園の地下に存在する謎の遺跡。そこに時を停める「魂の煉獄」があるとレオンは言う。それを信じたのが運の尽き。もうさっきから、罠、罠、罠の連続で生きてるのも不思議なくらい! あんたもなんとか言ったらどう!?
シェリカ、お前パンツ見えてんぞ」
「こ、この莫迦ーっ!!」
 トラブルメーカーレオンが本領発揮のゴールドシリーズ第1弾!
(GA文庫HP紹介ページより抜粋。)
・感想
スピンオフ小説として、レオンという存在を書く作品だった「レオン・ザ・レザレクター」シリーズが完結を迎え、新生したレオンガーラ・ジェス・ボルヴォーダンという精霊。彼を主役のままに、新生したレオンの活躍を描くのがこの「レオン・ザ・ゴールド」シリーズですね。
今回は「インディ・ジョーンズ」ばりの洞窟探検作品。
トルバス市の中央に位置するケセラテ自然公園の地下に存在するという、墜落した精霊島。ホワイト・シリーズの舞台でもあるその精霊島の中にあったと言われている「魂の煉獄」というものを求めて、レオンは精霊島地下遺跡にシェリカと、犯罪を犯したために契約精霊と引き放されて「魂の煉獄」を求める女性、カヅキ・リサノア、それと隠れてついていく精霊のセヴニエーラの4人で侵入する、という内容です。
今回の作品はこれまでの「レオン・ザ・レザレクター」の超シリアス風、「ブラック」などのミステリ風、サスペンス風な作風とはいささか違い、アクション成分大目でいて少しのシリアスという、活動的な印象を覚える作品でした。地下遺跡の中ならではの数々の侵入者対策のトラップや、落盤などの地下特有の事故。そういったものに、時に肉体を使ったフィジカル・アクションで、時に精霊雷などを使った精霊特有のアクションで対応し、目的地を目指す―――そんな、見た目に派手な演出が目を引きました。
かと言ってこれまでのシリーズにあった、心に響いてくるような言葉や感情の発露―――そういった演出が無かったかというとそんなことも無く。
契約精霊と引き離され、レオンに逆恨みで八つ当たりをするカヅキ・リサノアは犯罪者でもあったが、それでも契約精霊を大事に思う心に偽りは無く。それをシェリカも感じ取り、彼女のために怒ったり、レオンにその感情を吐露して『人間の心』というものを言い聞かせようとしたりするなど、相変わらず「人間と精霊」という『同じではないが近い存在で、しかしやはり決定的に違う2者の存在』というものの魅せ方が大迫先生は見事でした。
総じてこの作品は、前作となる「レオン・ザ・レザレクター」シリーズに比べるとレオンの心の大問題であった部分は解消されているだけに主役にこれと見える影が無く、レザレクターシリーズよりも作品全体のイメージは明るいものになっています。裏表紙にも書かれている通り、「トラブルメーカーレオンが本領発揮」という言葉の通りの、アクション中心で痛快で、それでいてしんみりした心に染みる一面もある作品―――そんな印象でした。